2023 Fiscal Year Research-status Report
Victims of the Revolutions and Political Culture in Modern France: A Study of July Column in Paris
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23K00893
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長井 伸仁 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10322190)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フランス / 革命 / 政治文化 / 死者 / 墓地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、パリのバスチーユ跡地に1840年に建造されたモニュメント(「七月の円柱」)の基部に、七月革命および二月革命の犠牲者が埋葬されている事実に注目し、その建造の経緯、犠牲者の認定作業、落成式の様子、モニュメントの表象と政治利用などを研究するものである。それを通じて、19世紀フランスに継起した諸体制のそれぞれが犠牲者の身体をいかに認識していたのか、身体の重要性はどのようにして減退に向かうのかなどを明らかにし、近代特有の政治文化を浮かび上がらせることを目指す。 フランス革命期の政治史研究によれば、革命の参加者・犠牲者はその身体性を中心に据えて認識・表象されており、その対象は革命の中枢を担った人物に限らず無名の市民にも広く及んでいた。「七月の円柱」が墓地の役割を付与されたことは、この政治文化が継続していたことを示唆する。もう一つ注目すべきはバスチーユという場の重要性であり、建造物は1789年の占領後まもなく解体されたが、跡地ではその直後から祝祭などが頻繁に開催され、フランス革命の「記憶の場」の位置を早くから獲得していたことがうかがえる。 七月革命の蜂起側犠牲者については、革命直後の混乱のなかでルーヴル宮やイノサン墓地に埋葬されていたことが確認された。また、街区や街路のレベルで詳細な調査が市民によっておこなわれ、犠牲者一覧が市当局に提出された事例も確認できた。1840年の円柱建立は、このような市民に発した動きを政府が汲み上げた側面もあると考えられる。 1848年については、二月革命直後の3月10日に犠牲者の合葬式が挙行されたことに注目したい。合葬までの期間の短さは、円柱が「革命の記念碑かつ墓地」として広く認知されていたことと、犠牲者の特定が迅速におこわれていたことを示すと考えられる。これらの点については今後の調査の対象としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度は、関連諸分野の研究をフランス以外も含めつつ調査した。また史料としては、新聞、政治家の回想録、小冊子類を閲覧したほか、パリ市歴史図書館に所蔵されている七月革命関連の行政文書と、パリ文書館に所蔵されている七月革命犠牲者の補償関連記録を閲覧した。いずれも過去の史料調査で部分的に撮影していたものであるが、それによれば、七月革命の参加の認定を求める住民は相当な数に上っていた(たとえばパリ第12区だけで1830年に829名の認定申請がなされている)。 この史料のより包括的な調査を令和5年度後半にフランスで実施する予定であったが、おもに時間的な制約からこれを実施できず、令和6年度に持ち越すことになった。この点が研究の一定の遅れの主因になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、前年度に引き続き隣接分野も含めた関連研究の調査をおこなう。また、2週間程度の史料調査を二度、実施する予定である(うち一度は令和5年度に実施予定であったものの代替である)。当初の計画にしたがい、令和7年度に補足的な史料調査を実施したのち、研究の取りまとめと成果報告をおこなう所存である。
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Causes of Carryover |
(理由)フランスでの史料調査が実施できなかったことによる。 (使用計画)上記調査は令和6年夏季に実施する。
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Research Products
(2 results)