2023 Fiscal Year Research-status Report
3D modeling of Jomon cord marker by the structure from motion and identification of the pottery produced at the same time
Project/Area Number |
23K00946
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
宮原 俊一 東海大学, 文学部, 准教授 (50297206)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 縄文 / 縄文原体 / SfM / 3Dモデル / 3D原体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、‘縄文原体の実態はいかなるものであるのか’という問いのもと、三次元形状の復元を可能にするSfMを利用することによって、土器の表面に縄目模様となってあらわれる縄の圧痕(以下、縄文)から、縄文原体を3Dモデル(3D原体)として忠実に再現することにある。さらに、再現した標識3D原体を用いて、複数の同時期製作土器を特定していくことまでを研究目標の到達点としてる。 初年度は、これまでの研究で同一原体を特定した資料の接写撮影を行い、縄文原体の3Dモデル化を進めた。対象資料は20個体分の完形土器に付された1段の縄(無節斜縄文)・2段の縄(単節斜縄文)である。1個体中3~4ヶ所の部位で、重合写真の撮影を行った。1原体の平面を3Dに復元するには、1図画30~50枚の撮影が必要だったが、これには焦点移動撮影を可能にする電動スライダーを用いることで明瞭かつ精緻な重合撮影を行うことができた。 撮影データは加工を加えず、そのまま点群合成ソフトにより3Dモデルを作成した。しかし、この段階では単なる面として捉えた縄の圧痕(ネガティブイメージ:凹面立体画像)の3Dモデルであり、原体の復元にはこれをポジティブイメージ(凸面立体画像)として加工しなければならない。そこで、面として再現された3Dモデルを表裏逆転させることで、立体化した原体の表面を作成した。これらの処理にはモデリングソフトを利用したが、この過程においてサーフェスモデル(表層画像)に現れる縄文の「特徴点」を抽出することにより、原体の回転域(原体が1回転した範囲)を再現することができた。この「特徴点」の抽出は、3D原体を復元する上で最も重要な要素であり、正確な「特徴点」を得るためにも、土器1個体中で数ヶ所での接写が必要なのである。そして、この「特徴点」から導き出された回転域のモデルを柱状化するこにより、試作3D原体を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3D原体の完成を目的に、まずは試作3D原体の作成を進めた。そのため、3Dモデルの構築に必要な土器の重合接写を行った。当初、完形土器(神奈川県王子ノ台遺跡出土:弥生時代後期)20個体の撮影を計画していたが、正確な「特徴点」を得るために1個体で複数個所の撮影が必要であることが判明した。そのため、撮影は当初の目的数に達していないが、電動スライダーをカメラに装着することで撮影の効率化を図り、現在まで14個体の土器の重合接写が完了している。残りの6個体については、その大きさ(器高)から撮影環境を変えねばならず、次年度以降の撮影に計画変更した。 撮影が完了した14個体の土器については、土器1個体につき約200枚のデータを得ることができた。これらのデータはすべて点群合成ソフトにより3Dモデル化し、回転域に現れた「特徴点」を抽出した。これを柱状化することにより試作3D原体の復元までは完了した。しかし、準備したモデリングソフトではサーフェスモデル(表層画像面)に現れた「特徴点」を一点に合成することができず、およその合成によって「特徴点」を合成し、柱状復元を行っている。このため、初年度の目的としていた同一個体内で生成された試作3D原体を比較することで、同一原体による圧痕の可変領域(押圧の強弱等による形状の違い)、施文時における原体のずれや滑り等の確認と記録については未だ完了していない。 また、二次元画像で同一原体を特定した個体間でも、試作3D原体を比較することを目的としていたが、これについても、より実態に近い試作3D原体が作成できていないことが支障となっており、未了のままである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究計画として、各種縄文の「標識3D原体」を製作することを目的としている。これを実現するためにも、まずは試作3D原体の完成を目指す。これについては、モデリングソフトの見直しを図り、より簡易かつ正確に3Dモデルが製作できるようにする。モデリングソフトについては、前年度はその操作に精通する熟練者よりアドバイスを受けながら研究代表者本人が利用してきたが、操作性が煩雑であり使いこなすには相当な時間を要したことから、場合によってはソフトに精通した熟練者に3Dモデルの製作を依頼することも考えている。 また、撮影環境の再整備を理由に保留していた6個体の資料についても、早い段階で撮影に着手する。これは、前年度の目的で未了となっている同一個体内で生成された試作3D原体の比較を実現するものであり、同一原体による圧痕の可変領域を明らかにした上で、早期に3D原体の完成を目指す。 「標識3D原体」については、1段の縄・2段の縄・多条の縄・付加条・絡条体それぞれの原体について、当初の目的にある1種10点を製作する。そのためにも、サンプルとなる資料については厳選した上で、これをモデル化する予定である。しなしながら、研究代表者が籍を置く機関には、全ての原体の圧痕を準備できないことから、かつて縄文の同定研究で協力を仰いだ他機関所蔵の資料を利用する。資料の実見調査により対象資料を選定した後、3Dモデル化に着手する。資料採集遺跡数については、縄文時代の4遺跡(前期・中期・後期・晩期)、弥生時代の2遺跡(中期・後期)を想定している。
|
Causes of Carryover |
撮影環境整備費(デジタルカメラ・電動スライダー)の価格が、計画当初から予定していた額面よりも安価となっていたことが最も大きな理由である。比較的まとまった額面を翌年度分として使用できることから、翌年度の使用計画として、大量かつ大容量の画像データを処理するために、高スペックパソコンの導入を考えている。 試作3D原体を14個体分の土器から再現したが、総計約3,700イメージを3Dモデル化するため、かなりの時間を要した。本研究では、高解像度でのマクロ撮影データの処理によって「特徴点」を見極めることに重点を置いていることから、処理能力の髙いパソコンをさらに増やし、速やかに大量の3Dモデルが再現できるよう研究環境を整える計画である。
|