2023 Fiscal Year Research-status Report
水浸・水損文化財保全における乾燥剤凍結乾燥法の適応性評価と新展開
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23K00953
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
中尾 真梨子 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (10964934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 保存科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、乾燥剤凍結乾燥法の確立を目指すものである。乾燥剤凍結乾燥法とは、市販の乾燥剤と冷凍庫、密閉容器を利用した乾燥方法を「乾燥剤凍結乾燥法」と称し、水分を含んだ文化財(水浸出土木製品、水損文書等)の新たな乾燥方法として開発を進めている。乾燥剤凍結乾燥法は、手軽に購入できる材料を用いた、従来と比較して安価かつ単純な作業手順で処理が行える方法である。これまでの基礎的実験の成果として水浸出土木製品に対して効果が得られることを確認している。また、その際に得られた知見から被災水損文書へ応用し、簡便な乾燥と脱臭が可能である画期的な乾燥方法であることを明らかにした。しかし、いまだ課題は多い。 本研究では、1.適正な乾燥剤の選定、2.乾燥剤凍結乾燥前後の構造および組織変化の観察を行い、乾燥剤の違いによる乾燥剤凍結乾燥法の乾燥挙動の変化と文化財に与える影響について検討し、更に効率的な乾燥条件の確立と乾燥現象の科学的解明を目指す。 初年度である令和5年度は、課題1.適正な乾燥剤の選定 に関する基礎的実験を開始した。異なる特性を持つ乾燥剤(A型シリカゲル、B型シリカゲル、活性炭)を用いて乾燥剤凍結乾燥を行い、密閉容器内の温湿度変化を複数条件下で観察した。この成果の一部を、日本文化財科学会第40回大会において研究発表している。また、災害により水損した紙資料の乾燥剤凍結乾燥法の試用を進めている。令和5年度は福島県、長野県、神奈川県で乾燥剤凍結乾燥法の試用を開始し、一定の効果を確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的な実験と、各県と連携し被災した水損紙資料の乾燥剤凍結乾燥法の試用を開始しており、初年度は問題なく研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、乾燥剤を用いた凍結乾燥実験の継続と、令和6年度からはX線を用いた乾燥剤凍結乾燥前後の資料の構造調査を開始する。また、各県で試用を開始した水損紙資料の乾燥剤凍結乾燥法の継続した調査を行う。
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Causes of Carryover |
令和5年度は順調に研究を進めていたが、業務の都合により行えなかった調査があるため。
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