2023 Fiscal Year Research-status Report
流路網再編と岩床侵食のダイナミクス:流域発達過程全容解明への巨・微視的アプローチ
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23K00973
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 徳孝 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (60314358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 圭輔 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 准教授 (80774794)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 岩盤河川 / モデル実験 / 山岳河川地形 |
Outline of Annual Research Achievements |
流路スケール(reach scale:単一流路)のアナログ物理実験(室内モデル実験)において,河川による流路の下方侵食と側方侵食の速度を時系列での評価を試みた.長さ1 m程度の水槽を用いて,侵食可能だが侵食抵抗の高い基盤模擬物質で構成された層が侵食抵抗の低い表層からある一定の深さで存在する系を設定した.河川は地形発達(地形変化)を引き起こす主要因であり,下方侵食と側方侵食は基盤岩の形状を決める.下方侵食と側方侵食の速度の関係は互いに独立ではないことを示唆する先行研究がいくつかあるが,詳細は未だ明らかとなっておらず,これらの解明に本研究は貢献する.実験の結果,下刻が進行し,抵抗の大きい層に到達する,下刻速度は低下するともに側方侵食が増大した.次に,均一な基盤において側刻速度が地形パラメータにどう依存するかを理解するために,数値実験(コンピューター・シミュレーション)で屈曲流路における下刻と側刻の関係性を調べた.流体の計算には,マニング則を用いた既存の簡易的な計算モデルを部分ごとにパラメータを変えて適用することで,屈曲流路に応用できる計算コストが低いモデルを考案し計算を行った.その結果,側方侵食過程についても,冪指数などは異なるが,長期的な下刻速度で標準的なモデルとなっているストリーム・モデルと同様の関数形となった.この定式化により,長期タイムスケールの地形発達シミュレーションに側方侵食の効果を組み込むことが可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩盤河川の地形発達は,垂直成分の侵食である下方侵食と水平成分の侵食である側方侵食の組み合わせで決まり,そのため様々な地形が実現される.これらを個別にとらえることは地形学的に重要であり,それらの定量的な理解につながるデータを得るための実験はおおむね予定通り進められた.
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Strategy for Future Research Activity |
技術的なこととしては,実験の目的や種類によっては実験時間が長時間(数週間)に及ぶが,その中で地形測定にかかる時間の割合が高く,これの効率化を検討したい.内容的には,侵食抵抗の差異のほかに,下刻・側刻の割合を変動させている要因を検討したい.堆積物の有無の重要性は先行研究でも指摘されているが,それの依存性に関する理解の精密化を試みる.
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Causes of Carryover |
実験地形の測定には写真測量を用いている.実験が一定時間経過するごとに測定が必要で,毎回200枚以上の高解像度の写真を撮影する.それらの写真をSfM写真測量ソフトに読み込んで3Dモデルを作成するが,これの処理(計算)に毎回1日程度要す.この工程を高速化するために,初めから3Dモデルが得られる3Dスキャナーの導入を検討している.実機を用いて実験地形をスキャンするデモンストレーションを取扱業者にしてもらい,データを実際に解析してみるなど,スペック,価格,使い勝手等を勘案し総合的に機種選定をするにあたり時間を要している.早めに見通しは立てて判断する予定である.
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