2023 Fiscal Year Research-status Report
Autonomy in the Zomian Livelihood: A Case Study of Mountain Dairy Farming in Europe and Japan
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23K01033
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松嶋 健 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 准教授 (40580882)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 山地酪農 / ゾミア / ヨーロッパ / 北海道 / パストゥール化 / ミクロ・バイオポリティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、酪農と牧畜に関する人類学を中心とする先行研究、ゾミアについての歴史学や政治生態学的研究、コロニアリズムとフードスケープにまつわる研究、微生物生態学の分野、および微生物に関するマルチスピーシーズ人類学関連の文献を中心に研究を行なった。とりわけ、「社会」と「自然」双方の「パストゥール化」についての理解を深めることで、これまで行なってきた多様な「施設化」や「実験室化」の問題との深い関連を捉えることが可能となる視座が浮かび上がってきた。この視座は、細菌学を中心とする生物学および生物医学と公衆衛生の連携という側面からの「近代」のパラダイムの再考という問題系とつながっており、微生物による発酵と腐敗の検討を手がかりとして、「思考する存在」「理性的存在」という抽象化され孤立化させられた近代の「人間」像を、具体的な「食べる存在」「排泄する存在」であり、代謝を通じた「循環のなかの存在」として新たに「人間」像を描き直す作業としても進めている。 COVID-19のパンデミックを経験してさらなる「パストゥール化」が進行しているように見えるなか、産業的酪農と比較しながら山地酪農の実践を見ることで、「ポスト・パストゥール化」や「非パストゥール化」の方向性を、ミクロ・バイオポリティクスからマクロ・バイオポリティクスに至る広がりのなかで捉えるための足掛かりとなる一歩を踏み出せたと言えよう。次年度に向けてさらに研究をすすめ、まとまった形にしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では2023年度に北海道およびヨーロッパでの現地調査を実施する予定であったが、スケジュールおよび予算の関係で次年度以降にまとめて行うことに変更したため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、引き続き文献研究をすすめるとともに、中国山地、北海道、ヨーロッパにおける現地調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に実施予定だった北海道およびヨーロッパの調査を次年度以降にまとめて行うことにしたため、予算の一部を繰り越した。現地調査のための旅費については、渡航の回数を減らすとともに滞在期間を増やすなどして、2024年度と2025年度に適切に割り振って使用する予定である。
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Research Products
(1 results)