2023 Fiscal Year Research-status Report
死体遺棄罪における保護法益理解の実質化と死体の「遺棄」該当性判断に関する研究
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23K01137
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松尾 誠紀 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (00399784)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 刑法 / 死体遺棄罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、死体遺棄罪における死体の「遺棄」該当性について未だ明確な判断基準が確立されていないことへの問題意識に基づき、限界事例における判断でも十分に機能しうる判断基準の構築を最終目標とする。そのために、①同罪の保護法益の具体的内容を解明し、その上で、②具体的に把握された法益理解に基づいて、法益侵害との関連性を有する「遺棄」概念を確立することを目的とする。 2023年度は、研究目的①と関連して、死体遺棄罪の保護法益理解に関するわが国の判例資料の収集・調査・検討ならびに文献資料の収集・調査・検討を行った。特に2024年度になろうとする2023年3月24日に、最高裁は、死産したえい児の死体を段ボール箱に入れて自室にあった棚の上に置いて放置した行為に関し、死体遺棄罪の成立を認めた原判決を破棄して、無罪を言い渡すという注目すべき判断を示した。本判決の妥当性を考える上では、本判決の保護法益理解に関する検討、およびそれとの関係で、上記研究目的②に関する検討も不可欠である。そこで、本判決の判例評釈を行う原稿執筆依頼を受けたことから、研究目的①に関する基礎研究とともに、研究目的②に関する発展的研究も行った。本判決については、他の研究者等によってもいくつかの評釈が発表されているが、長年の死体遺棄罪研究の蓄積に基づく効果的な検討によって、斬新な分析視角に基づく充実した考察結果を獲得することができた。この研究成果は、いち早くオンライン論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、①死体遺棄罪の保護法益の具体的内容を解明し、その上で、②具体的に把握された法益理解に基づいて、法益侵害との関連性を有する「遺棄」概念を確立する、という二つの研究目的に関連した研究に取り組んだ。その結果、斬新かつ充実した研究成果を獲得し、それをオンライン論文として公表することができた。この成果は、今後、本研究課題に取り組む上での土台となる重要な知見といえる。本研究課題への取り組みとしては非常に順調なスタートを切ったと評価できる。また、現在の状況として、死体遺棄罪に関する研究報告依頼も受けており、本研究課題に関する一つの研究成果がさらに次の研究成果を生み出すという好循環も見られる。 以上のことから、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、①死体遺棄罪の保護法益の具体的内容を解明するという研究目的に関連して、ドイツ刑法の死者の安息を妨害する罪の保護法益に関する判例資料・文献資料の収集・調査・検討を行う。その際には同時に、②具体的に把握された法益理解に基づいて、法益侵害との関連性を有する「遺棄」概念を確立するという研究目的とも関連するかたちで、ドイツ刑法の同罪にいう「死体等に対する冒涜的な乱暴行為」の該当性判断に関する判例資料・文献資料も収集し調査・検討を行う。 これらのドイツ刑法に関する基礎的理解は、現在依頼を受けている死体遺棄罪に関する研究報告に活用し、さらなる研究成果発表の糧としたい。
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Causes of Carryover |
2023年度の研究費において次年度使用額が生じたが、その原因として、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が社会的には一段落してもなお、研究成果発表等の機会となる多くの研究会が、同年度を通じてオンラインと対面の併用開催となり、その結果として、国内出張の機会が減少したことが挙げられる。ただ、徐々にその状況も対面のみの研究会開催に変化しつつあるため、2024年度は国内出張の機会が増えると思われる。また、2024年度は、ドイツ刑法の死者の安息を妨害する罪の保護法益に関する判例資料・文献資料の収集・調査・検討を行うため、その作業の一環として、ドイツでの資料収集および研究打ち合わせも実施する予定である。現在、円安等の影響により、海外への航空券代・宿泊費などが高騰しているところ、2023年度の未使用額は2024年度の海外出張旅費に活用できる。
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Research Products
(1 results)