2023 Fiscal Year Research-status Report
性非行少年の同種再非行防止に効果的な諸機関連携に関する基盤的研究
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23K01150
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岡田 行雄 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (40284468)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 施設内処遇 / 社会内処遇 / 認知行動療法 / 性被害 / ピア・グループ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、国内では、性非行少年が在院者に多い、中津少年学院を、少年院出身者からなるNPOセカンドチャンスのメンバーと共に訪問し、院長から聴き取り調査を行い、性非行の背景の一つには重い知的・発達障がいがあることを学んだ。そうした少年の場合、少年院での処遇に時間がかかることも仮退院までの期間が、他の少年院の場合と比べて有意に長いことから示されている。また、セカンドチャンスには、性非行を行った者がつながっていないという事実も聴き取ることができた。 他方、性非行少年の同種再非行防止に向けた治療を行っているクリニックを訪問し、その実務を担っているカウンセラーへの聴き取り調査も行い、性非行少年がクリニックでの治療につながる上で様々な困難があることが確認できた。また、日本での学会参加などを通して、矯正施設を出た後の性非行少年への処遇の在り方、性非行少年が受けてきた被害への対応等が大きな論点となることが確認できた。 文献調査からは、日本における、性非行少年の同種再非行を防ぐための施設内・社会内処遇においては、とりわけ矯正施設退所後に、治療やプログラムを受け続けることに大きな困難があることが明らかになった。 ドイツ少年裁判所会議が2023年9月に開催されたのに合わせて、ドイツの精神病院等における性非行少年への治療プログラムへの参与観察や、性犯罪者の相談を受けているNGOにおける聴き取り調査も実施し、ドイツにおいても、日本の性非行少年と同じく、若年の性犯罪者が様々な被害体験を抱えており、それへの手当てが重要な論点であることを学ぶことができた。 これらの成果については、個別の研究会で報告を行った。そこでの質疑応答等を踏まえて2024年度中に成果を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、国内調査とドイツでの調査が順調に進んでいるが、それを活字論文として公表することはできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度のドイツ出張を通して、ドイツにおいて性非行少年の社会内処遇を担っているNGOの存在を把握することができた。また、ドイツの性非行少年の同種再非行の防止に向けて、当該少年に積み重ねられてきた被害への対応の必要性を説いているドイツの大学の研究者と知己を得た。そこで、このNGOの成果と研究者の研究をフォローするとともに、このNGOと研究者を訪問し、従来の成果と研究についてさらに情報を得ることにしたい。 国内においては、性非行少年に共通して見られる性的被害を中心とした被害の積み重ねに着目し、そうした被害の積み重ねへのあるべき対応を検討するため、非行少年や犯罪者に積み重ねられた被害への対応に関連する文献調査及び訪問調査を実施する。旅費の高騰を踏まえ、その節減に努め、可能な限りで、Zoom等の手段を活用する。
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Causes of Carryover |
前倒しした20万円ほどは、物品費が必要なかったため。残額の2万円余は2024年度に使用する予定。
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