2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K01285
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩波 由香里 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (40635447)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は、二つのプロジェクトから成る。一つ目のプロジェクトは、諸国家の選好に関する不確実性が存在する中で、現状維持国同士が相手の安全保障を脅かすことなく自国の安全保障を向上させることはどのような条件下で可能なのか、またどのような条件下で軍拡競争や先制戦争が引き起こされてしまうのか、という問いに対する答えを、ゲーム理論を用いて導き出すことを目的としている。二つ目のプロジェクトは、脅威に関する不確実性が存在する中、長期にわたり抑止が成功してきたにもかかわらず、なぜ安全保障政策の変更を行い、抑止の失敗を招いてしまう防衛国が存在するのか、という問いについて、ゲーム理論を用いて分析を行うことを目的としている。一年目にあたる2023年度は、一つ目のプロジェクトに焦点を当て、先行研究を参考に様々なモデルを構築した上で、均衡を導出した。しかし、当初期待していたたような結果があまり出なかった。均衡は導出できたのであるが、興味深いと研究者自身が考えるような結果につながらなかった。このような状況を打開すべく、先行研究をもう一度洗い出す作業を行った。この作業を通して、これまでのモデルが抱えていた様々な問題点に徐々に気づくことができ、またサブスタンティブ的にも今まで理解できていない部分を明らかにすることができた。この作業を通して得た新しい知見を基に、今後はモデルの修正を行い、均衡を導出していうことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗は遅れている。理由としては、二つある。一つ目は、昨年度で終了する予定であった科研が、コロナの影響を受けて遅れ、その影響が本科研にまで及んでいるからである。その科研は本来であれば2022年度で終了予定であり、二本の論文を完成させることを計画していた。うち一本は雑誌に掲載されるにいたったが、もう一本は査読中となっている。2023年度は、これまでに得られたフィードバックをもとに、大幅に加筆・修正する作業に追われてしまい、その結果本科研に割くべき時間が削られてしまった。もう一つの理由は、本科研の一つ目のプロジェクトを遂行する上で、もう少し先行研究の(理論的、サブスタンティブ的)知識が必要であると感じるようになったためである。既にいくつかのモデルを構築し、均衡を求めたのであるが、あまり興味深い発見となるような気がしなかった。このような状況を打開するために、先行研究、モデルをもう一度見直し、モデルの再構築をしたうえで、様々な拡張を行う必要性が生してしまい、その結果、研究の進捗がかなり遅れることになってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に行った先行研究のレヴューを引き続き行っていく予定である。また、国際関係論においてゲーム理論を用いて分析を行っている研究者が多く集まる研究会などに参加し、本プロジェクトにおけるモデルに関する質問や意見交換を行った上で、モデルの再構築を行う予定である。また、サブスタンティブ的には、当初二国間の戦略的相互作用を考察することを考えていたが、必要があれば、また面白い結果につながるのであれば、第三国も取り込んだ同盟の研究を行うことも視野に入れている。同盟により、ある国家の軍拡を行う決定がどう影響を受けるのかについても、分析する余地を残したいと考えている。また、研究成果は論文の出版として行うことを当初は考えていたが、サブスタンティブ的な背景をより詳細に説明することが可能な、著書を出版することも考慮に入れている。
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Causes of Carryover |
2022年度に終了予定であった科研に時間を取られてしまい、本科研の進捗が遅れてしまったこと、また、想定していたよりも理論分析の結果が芳しくないこと、またサブスタンティブ的にも、先行研究を見直す必要が生じ、これらの作業に時間がとられたため、研究費の使用額が大幅に減ってしまった。以上に加え、研究成果の公表の仕方としても、論文ではなく、著書の可能性を残しておきたいと考えたため、研究費の使用を控えるにいたった。
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