2023 Fiscal Year Research-status Report
Designing Markets for Data Exchange and Pricing Data
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23K01314
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡邊 直樹 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (20378954)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | データの取引市場 / 転売可能性 / プラットフォーム / 協力ゲーム / 被験者実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、情報の集約物であるデータの取引において、その再販可能性を考慮した場合のデータとそれを構成する変数の価格付けを定式化し、そこでの取引の性質を被験者実験によって検証している。2022年度に実施した実験ではデータの取引者に対して予算制約を課していなかったが、2023年度の実験ではそれを課すことで、理論的にはまったくタイトではない制約であるにもかかわらず、データとそれを構成する変数の価格、取引の効率性の変動が抑えられることを確認した。この結果は評価の高い査読付き国際コンファレンスである2023 IEEE International Conference on Big Dataにおいて発表され、Conferene Proceedings論文として刊行された。(Ogawa K., Watanabe N., Resale-proof Trades of Data under Budget Constraints: A Subject Experiment, Proceedings of 2023 International Conference on Big Data, IEEE Xplore, 5665-5673)データを校正する変数の価格は現在のところ言い値で決まっていることが多く、しかも、複製が容易であるため、希少性に基づく伝統的な価格付けが困難であった。この実験では、データの複製による転売を許容した上で、データの転売件数を割出し、それよりも多くの転売がなされるときにはデータを校正する変数も変動するように設定すれば、そのような変数にもtractableな価格をつけることが可能であるとの理論予想が概ね適切であることが被験者による取引実験において観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度、2023年度には被験者実験を実施しており、概ね順調に研究が進められている。しかし、データ取引ではその後の企業間競争を反映して価格が設定されることが想定される。各企業がデータを保有することで得られる収益を実験では被験者に数値として示し、それを参照することで被験者はデータの売買に関する意思決定を行うことができるのだが、数理モデルにはまだ企業間競争を取り込めてはいない。現在、この課題に取り組んでおり、国際学会にてその成果を発表する予定である。データの価値はこれまで抽象的ないくつかの性質を満たすことを前提として、抽象的な形式で外性的に与えられてきたが、背後に企業間競争を明示的に導入することで、データ取引の厚生分析も行えるようになることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
被験者実験では実際の取引を簡略化した状況を設定している。そのため、情報工学的手法で生産される実際のデータの取引に適用できるかを慎重に検討することが今後の重要な課題である。取引者の意思決定の仕方を検証するべく、視線計測等の技術を援用することも検討しており、実験データの巨大化に対応した適切な処理を施す必要もあるだろう。前年度から実験データを蓄積が進んでおり、理論モデルの改良もなされつつある。理論面では、寡占市場での企業間競争を念頭に、データを保有することで得られる収益の計算を行なっており、より一般的な結果を模索中でもある。数理モデルをより具体的なものにすることで、厚生分析を可能にし、データ取引における巨大プラットフォームの規制に関する知見を得ることが今後の目標の一つである。
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Causes of Carryover |
次年度には視線計測や音声認識などの情報技術を利用した実験を実施したいのだが、それは当初の計画にはなかったため、その準備期間をとるだけでなく、機材の購入なども含む実際にかかる経費を年度を跨いで支出することは困難であると判断したため、前年度の使用額の一部を次年度に繰り越した。
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