2023 Fiscal Year Research-status Report
On the Long-Term Health Effects of Natural Disasters and Their Mechanisms
Project/Area Number |
23K01379
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
内田 真輔 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70636224)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 自然災害 / 健康 / 適応 / 長期影響 / 東日本大震災 / 計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東日本大震災をケース・スタディとして取り上げ、自然災害が被災者の健康へ及ぼす短期的および長期的な影響と適応能力の関係を定量的に明らかにするために、次の3項目:(A)データベースの構築、(B)分析モデルの構築、(C)計量分析を順次実施している。2023年度は(A)新規データの収集と(C)新規データを用いた計量分析を主に行った。 (A) 新規データの収集・整理:健康影響を示す新たな指標として通院および入院患者数を、東日本大震災関連データとして被災地域内外の都道府県への避難者数をそれぞれ入手した。通院・入院患者数は厚生労働省の患者調査より、避難者数は復興庁よりそれぞれ入手し、都道府県パネルデータベースを構築した。 (C) 計量分析: 構築したパネルデータを用い、東日本大震災に伴う避難者の短期的および長期的な健康影響について、イベントスタディ型の回帰分析によって検証した。具体的には、入院および外来患者数を左辺、年次ごとの避難者数を右辺に置き、双方向固定効果モデルによって避難者数の増加に伴う入院・外来患者数の時系列変化を推定した。分析結果より、東日本大震災の被災に伴う避難者の存在が、日本各地で入院・外来患者数を増加させたことが明らかになった。この結果は、被災地から日本各地へ散開した避難者の健康状態が悪化したことを示唆している。避難者の健康へのマイナス影響は特に高齢者で顕著に認められ、その影響は震災後数年を経ても弱まるどころか、むしろ強まった。こうしたマイナス影響の大きさは、年齢に加えて、都道府県間でも大きく異なることから、避難施設や避難地域の居住環境の違いなどによる心身への悪影響が推察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの収集・整備および分析について、おおむね予定通りに進めることができている。上述したように一定程度の成果を得られており、比較的順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状の分析と並行して、より精緻な検証を行うために個票データ利用に向けて準備中である。データを入手次第、できる限り速やかにデータベースを整備し、分析をとり行うことを目標とする。
|
Causes of Carryover |
当該年度の予算は、おおむね計画通りに使用したが、データの収集・整理や研究協力者にかかる人件費・滞在費などが当初予定よりも嵩んだことで、高速ワークステーションの購入を次年度に見送った。残額を次年度に繰り越すことで、高速ワークステーションの購入費に充てることとする。
|