2023 Fiscal Year Research-status Report
無形資産の生産力効果 ー相互連関、地域間・産業間リンケージを中心として-
Project/Area Number |
23K01381
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 貴幸 立正大学, 経済学部, 特任准教授 (90881780)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 社会資本 / 無形資産 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画では、2023年度は初年度ということもあり、分析に使用するデータの整備を中心に進める予定であった。しかし本研究が始まったばかりの2023年5月に、内閣府から社会インフラの生産力効果に関する分析依頼が来た。我々の研究計画を説明すると、それでよいということで、内閣府経済社会総合研究所のプロジェクトとしても位置づけられることになった。この場合、データ作成に関する協力は得られるものの、成果は年度単位になるため、2023年夏ごろにはデータをそろえ、推計を始めることになった。 この研究とは別に、国際共同研究基盤BでBounfour University of Paris Saclay教授と共同研究をしていることから、9月及び11月にパリを訪問した際、共同研究の成果の確認だけでなく、本研究の推計結果についても随時説明を行った。そして2024年3月に学習院大学でワークショップを行った際にも、本研究を報告している。 本研究は、社会資本や公的な無形資産が外部性を通して、生産性を向上しているのではないかという問題意識から、生産関数の推計によってその効果を確かめようとするものである。実はデジタル化についても同様の外部効果が見込まれている。これについては、2023年8月にこれも内閣府経済社会総合研究所から、同研究所が発行する「経済分析」用にデジタル化の経済分析を依頼されたため、本研究との相乗効果を期待して引き受けた。こちらの研究は、「デジタル化の経済学 ―計測問題とスピルオーヴァー効果を中心としてー」を執筆、2024年3月に「経済分析」で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに述べたように、2023年度の活動は、データ整備が主体であったが、これは2023年夏ごろまでには大体整備を終えた。我々が利用するデータは、主に「日本の社会資本2022」、R-JIPデータベース2021、地域間産業連関表である。これらを使って社会資本及び公的な無形資産の生産性への影響に関する推計を夏から進めた。 推計結果については、1か月か2か月に1回オンライン会議を行い、修正をしていった。同時に本プロジェクトの共同研究者として参加している川崎一泰中央大学教授と岩崎雄也青山学院大学助教が、社会インフラの維持・補修についても研究を進めていた。このプロジェクトは、2023年10月から始まった日本経済研究所の生産性プロジェクトに組み込まれることになった。したがってオンライン会議では、この川崎・岩崎論文の進捗状況についても議論をすることになった。 社会資本の生産力効果についても、川崎・岩崎論文についても作業の締め切りが、ほぼ2023年度末であったため、集中してそれぞれの研究に取り組んだ。特に前者の研究については2023年3月に学習院大学で実施された国際ワークショップで報告を行った。一方後者に関しては、2024年3月26日に「老朽化が進む社会資本のメンテナンスが地域内外に及ぼす影響」として(一財)日本経済研究所のウェブサイト(老朽化が進む社会資本のメンテナンスが地域内外に及ぼす影響 | 一般財団法人 日本経済研究所 (jeri.or.jp))に掲載されている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会インフラの生産力効果と無形資産の役割については、ほぼ論文が完成しているため、今後は、学会や各研究会で報告し、そこでのコメントをもとに修正を行い、専門誌への投稿を進めていきたい。 現時点では、2024年5月に統計研究会金融班で発表を行う。また6月には依頼先である内閣府経済社会総合研究所で報告を行う。これらの報告のコメントをもとに、論文の修正を行って、夏ごろまでには内閣府経済社会総合研究所のディスカッション・ペーパーとして公表したい。 また2024年8月にはロンドンで開かれる第38回International Association for Research on Income and WealthのGeneral Conferenceで報告することも決まっている。こうした期間に専門誌への投稿を行いたい。さらに秋に開催される日本経済学会秋季大会での報告にも応募している。 一方、川崎・岩崎両氏のプロジェクトについては、すでに(一財)日本経済研究所のウェブサイトに公表されたが、今後この論文は、宮川が編集を担当する生産性に関する論文集(東京大学出版会から出版予定)の1章を構成することになる。この論文集の出版については、2024年10月に再度ミーティングを行う予定だが、出版に当たっては現行の論文の分量を増やす必要があるため、あらためて改訂が行われる際に、本プロジェクトとの関連性についても議論する予定である。
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Causes of Carryover |
すでに研究実績で述べたように、本プロジェクトは開始直後から、内閣府経済社会総合研究所のプロジェクトにもなったため、川崎氏や岩崎氏ら共同研究者となった人たちへの謝金の一部を内閣府が負担してくれるようになった。 残額の今年度における使用については、本研究が予定より早く進行していることから、様々な報告機会を見つけ、そのための旅費等に使用することにしたい。
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Remarks |
宮川努・木内康裕「生産性停滞 要因と対策(上)「豊かさ」への新たな戦略探れ」日本経済新聞、2024年2月21日. 宮川努「投資起点の好循環 目指せ 成長力を取り戻す 上」日本経済新聞 Analysis、2023年6月19日
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