2023 Fiscal Year Research-status Report
失業状態を含むヘテロジニアス・エージェントモデルの構築と最低賃金引上げの分析
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23K01444
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
蓮見 亮 武蔵大学, 経済学部, 教授 (90847526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 哲彰 武蔵大学, 経済学部, 助教 (30993547)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 最低賃金 / サーチ・マッチング / 平均場ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では最低賃金の引上げがマクロ経済へどのような影響を与えるかという「問い」を探求の中心に据え、基本的なヘテロジニアス・エージェントモデル(Bewley-Huggett-Aiyagariモデル)に2つの自然な拡張を加えることで最低賃金を扱うことのできるモデルを構築する。第1に各家計にそれぞれ異なる、ある遷移確率で変動する生産性をもたせることで、賃金の分布を再現する。第2にサーチ・マッチングモデルを導入し、各家計がその生産性に依存するマッチング確率と離職率に従い就業と失業の間で遷移するようにする。モデルのパラメータを現実経済を説明するようキャリブレーションした上で、最低賃金を引上げるシミュレーション分析を行い、最低賃金を引き上げることによって失業率はどの程度上昇するか、意欲喪失失業者はどれくらい発生するか、社会厚生はどうなるか、最適な最低賃金はいくらかなどの政策的課題に関する含意を得る。
今年度は、”General Equilibrium Effects of the Minimum Wage”という表題のディスカッションペーパーを公表した。本稿では、異質的な家計と内生的に決定される失業率を持つサーチ・マッチングモデルを構築することで、最低賃金の大幅引き上げがマクロ経済に与える影響を検証した。モデルは米国経済を再現するようにキャリブレーションされている。最低賃金の引上げのシミュレーションを行った結果、最低賃金の大幅な引上げが、雇用を含むマクロ経済の結果にマイナスの非線形効果を与えることが分かった。最低賃金15ドルのシナリオでは、GDPはベースライン比で約12%減少し、失業率はベースラインの5%から9.6%に上昇する。最低賃金引上げ直後の移行過程における雇用の純減は比較的小さく、これは自然実験を用いた実証分析の適切なデザインに示唆を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ディスカッションペーパー”General Equilibrium Effects of the Minimum Wage”を執筆・公表することで、本研究課題の目的を一定程度の水準で達成した。本稿は、日本経済学会で報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
公表したディスカッションペーパーを学会や研究会等で受けたコメント等反映する形でリバイズし、引き続きジャーナルへの採択を目指す。 このほか、本研究でこれまで得た知見を元に、連続時間ヘテロジニアス・エージェントモデルのマクロファイナンスモデルへの応用等を模索する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計算用ワークステーションの購入に代えて、既存のもので代替したため、未使用額が生じた。今後、必要に応じて更新を行う。このほか、必要に応じて論文校閲料、投稿料および学会出張旅費等に充てる予定である。
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