2023 Fiscal Year Research-status Report
International comparative study of the impact of institutional investors on portfolio companies
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23K01520
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
三和 裕美子 明治大学, 商学部, 専任教授 (10287881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 剛志 成城大学, 法学部, 教授 (30282966)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | パッシブ投資家 / アクティブ投資家 / アクティビスト / ESG / エンゲージメント / イベントスタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の主要な3つの研究活動を行った。まずQuick Factsetデータをもとに機関投資家の種類ごとの分析を行った。主要な機関投資家について、アクティブ運用、パッシブ運用、インパクト投資、アクティブファンドなどになど、投資スタイル、運用期間などについてその特徴を分析した。 第二にアクティビストファンドが日本企業と株価に及ぼす影響について分析した。株価については、アクティビストが介入した日本企業の株価や業績への影響についてイベントスタディによる実証分析を行った。さらに、アクティビストが取締役を送り込んだ企業の情報漏洩について、株価のBid-Ask Spread((高値―安値)/終値)を分析することで情報漏洩の可能性を指摘した。アクティビスト介入後の企業業績および設備投資に対する影響について実証分析を行った。その結果としてアクティビストの介入は日本企業の株価・株主還元には短期的には正の影響を与えるが、中長期的には負の影響を与えていることが明らかになった。その要因については今後の検討課題である。 第三に、国内外の資産運用開始者とアクティビスト、合計10社に対してエンゲージメントに関するインタビュー調査を行った。こちらのインタビューは日本国内でアクセス可能な機関投資家を対象とした。大手の資産運用会社はスチュワードシップ、責任投資レポートなどエンゲージメント活動に関する開示が進んでいるが、アクティビストの投資戦略、エンゲージメント戦略についてはインタビューを行ってより理解が深まった。また、パッシブ投資家のエンゲージメントについてはESGをトップダウン型で設定しているのに対して、アクティブ投資家やアクティビストについては個別企業の株主還元、経営戦略を中心としたテーマとなっていることなど違いが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は①Factsetデータから、機関投資家の種類、投資期間・スタイルごとに、各国主要企業の持ち株比率を分析する。②国内主要企業へのアンケート調査、③アクティビストファンドが介入した企業の株価、情報漏洩の問題についてイベントスタディ及び傾向スコアマッチング分析を行うことを予定していた。①、③についてはほぼ順調に進捗している。②のアンケート調査であるが、まずは機関投資家と企業がどのようなエンゲージメントを行っているかを明らかにするため、2024年度予定であった国内外の機関投資家に対するインタビュー調査を行った。また、企業に対するインタビューを今年度早々に行うことにより、アンケート項目を充実させたうえで、国内主要機関投資家と企業へのアンケートを調査を行っていく予定である。 2023年度の主要な活動としては、アクティビストによる日本企業への影響について株価・業績という観点で分析を継続的に行ったことである。また、アクティビストおよび資産運用会社のエンゲージメント状況について確認ができた。 当初の計画段階ではアンケート調査を先に行う予定であったが、インタビューを先に行った方がより実態に沿ったアンケート項目を作成することができると考え、本年度の研究活動と入れ替えた。企業へのインタビュー調査については2023年度に行うことが出来なかった項目である。この点については機関投資家へのインタビューと並行して行うよりも、機関投資家の声を聴いてからにするという判断であった。 研究計画の前後や研究計画に対して若干の遅れはあるものの、2023年度の研究進捗状況については概ね順調であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究予定項目は、当初の計画では①企業価値・業績と機関投資家の種類を反映した持ち株比率とESG項目の相関関係について計量分析を行う。②日本・米国の機関投資家へのインタビュー調査を行う、という予定であった。 しかし、当初2024年度に行う予定であった日本、米国、英国の機関投資家(資産運用会社)、アクティビストなど10社(国内で対応)に対してはすでにインタビュー調査を行った。2024年度は、ノルウェーやスウェーデ、オランドのアセットオーナー(年金基金)を対象として、投資哲学やエンゲージメントに関するインタビューを現地にて行う予定である。また、国内機関投資家と企業に対してアンケート調査を行い、機関投資家と企業のエンゲージメントに対する考え方、効果などについて分析予定である。2023年度の行ったインタビュー調査をもとにアンケート項目を精査し、より充実したアンケート調査を行うことができると考える。 また、機関投資家のスタイル別持ち株比率と企業のESGへの取組みについては、パッシブ機関投資家持株比率が高い企業ほどESGへの取組みは進化している」という仮説のもと、ESGの取組みについては、ESGスコアや開示情報をもとにしたデータを取得して相関を分析する予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に行う予定であったアンケート調査を2024年度に延期したため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(7 results)