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2023 Fiscal Year Research-status Report

日本の能楽から解明する伝統実演芸術の経済的自立手法に関する実証研究

Research Project

Project/Area Number 23K01597
Research InstitutionKyoto Seika University

Principal Investigator

小泉 真理子  京都精華大学, マンガ学部, 教授 (60468527)

Project Period (FY) 2023-04-01 – 2027-03-31
Keywords伝統実演芸術 / 能楽 / コスト病 / 経済的自立
Outline of Annual Research Achievements

本年度は4年の研究計画のうち、初年度にあたる。そのため本年度は、研究を着実に進めることに加えて、次年度以降に向けて研究遂行方法のブラッシュアップにも注力した。本研究の課題の一つとして、能楽における独自のマネジメント手法を把握するための研究実績が非常に少ないことがある。そのためまずは、伝統実演芸術の中では研究が一定に蓄積されている、フランスのオペラについて、その経営の歴史的変遷と現状について調査を行った。その上で、能楽との比較分析を開始したところである。調査にあたっては、先行研究に加えて、フランスへの劇場訪問や関係者のインタビュー調査、研究協力者とのディスカッション等を行った。
研究成果のうち、主なものを挙げると下記の通りである。
・日本文化の独自の仕組みと捉えていた制度の他文化における類似制度の発見
家元制や世襲制は、能楽において、芸の伝承や、劇場・舞台セットや衣装の手配、配役といったあらゆる面で、多大なる影響を与えている独自の制度であり、持続的な経営へのインパクトは大きいと捉えている。本方針に大枠では変わりはないが、フランスのオペラにおいても、一部世襲制がみられることが判明した。このような共通項を深耕すべきことが明らかになった。
・プロデューサーの役割の多様性の把握
能楽においては、実演家の主役であるシテ方が経営を取り纏めるプロデューサーの役割をも果たしている。一方で、フランスオペラでは、実演家とプロデューサーは特化した別の職として成立している。別人がプロデューサーを担っているため、多量のそして多様な業務が可能となり、当該芸術全体への影響範囲も大きくなる。具体的には公演収支だけでなく、各時代における実演家の地位や、社会における当該芸術の位置付けにもプロデューサーが寄与していた。このプロデューサーの役割の違いがコスト病回避にいかなる影響を与えているかについて今後分析していく。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は、「次年度使用が生じた理由と使用計画」に記したように、研究の遂行順序に変更が生じたものの、「研究実績の概要」に記した通りの一定の成果が得られたこと、そして研究を推進していく上での大きな課題はなかったことから、「概ね順調に推移している」と判断した。

Strategy for Future Research Activity

まず次年度は、能楽のマネジメントの独自性に寄与する制度や仕組みの抽出についてさらに掘り下げて調査・分析していく。
本年度は、フランスのオペラ経営に関する研究を調査したことで、能楽に比して一定の実績があることがわかり、能楽の経営について特徴を抽出する上でいかなる観点や視点が必須かについて大いに参考になった。
フランスのオペラにおいて、戦争といった社会のパラダイムの転換や、各時代における為政者の方針は、その芸術の役割を単なる文化としての鑑賞から、例えば、権威や階層の確立、情報伝達の手段、社交の場、武術の鍛錬や健康管理といったように様々に変化させてきた。この芸術の役割の多様性は、能においてもみられることであるが、現在明らかになっている情報は多くはない。また分析手法として、文章だけでなく、舞台の様子を描いた絵画を用いることもオペラに関する先行研究より有効であることがわかり、援用していきたい。
そして研究開始当初より計画していた、能楽の公演における収入/費用の構造分析や、能楽の切符代や一般物価指数等に関する実証分析を行っていく予定である。

Causes of Carryover

研究開始当初は、これまでの研究代表者の研究の蓄積により、能楽経営に関する情報は実証分析を進めるにあたって必要な程度は入手できていると考えていた。そのため、まずはその情報を基に実データの定量分析を行った上で、次にフランスのオペラ等との比較による定性的な分析を行う予定であった。しかしながら、本年度の研究の過程で、フランスのオペラ経営に関する研究実績は予想より多いことが判明した。そこで、その情報を基軸として能経営に関しても更なる調査・分析をすることによって、より充実した実データの定量分析が可能との考えに至った。以上より、本年度に予定していた定量分析のためのアルバイト代を次年度以降に使用することとし、次年度以降に予定していたフランス調査を前倒ししたため、予算の次年度使用が生じることとなった。次年度予算の主な使途は、定量分析のための資料整理代と、予定していた国内学会での発表、資料調査のための国内旅費である。

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Published: 2024-12-25  

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