2023 Fiscal Year Research-status Report
気候変動リスク情報の強制開示の影響分析:リスクとサステナビリティの統合的研究
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23K01674
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
上野 雄史 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (40405147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 典由 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (50366168)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | サステナビリティ / TCFD提言 / ESG |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績は、企業のサステナビリティ情報の開示促進要因とその社会的価値の可視化に焦点を当てたものである。まず、初期段階の調査として「企業におけるサステナビリティ情報の開示促進要因を探る」研究を実施し、ESG投資とパリ協定の背景にあるサステナビリティ情報の重要性を明らかにした。ESG投資の拡大に伴い、企業が環境、社会、ガバナンスに対する取り組みを投資家に示す必要性が高まっており、統一された開示基準の整備が求められている。証券アナリストが評価対象としているプライム上場企業275社を対象とした重回帰分析の結果、金融機関による持ち株比率と社外取締役比率が主要な要因であることが明らかとなり、機関投資家のエンゲージメントが情報開示を促進する重要な役割を果たしていることが示された。
次に、社会的価値に関連する研究では、企業の環境・社会への影響とガバナンスの重要性を論じた。水俣病や福島第一原子力発電所事故の事例を通じて、適切なガバナンス体制の構築を以前から求められていたことを示した。その上で、企業が社会に与えるプラスの影響についても言及し、カーボンニュートラル社会の実現に向けた技術革新に貢献することの重要性を明らかにした。2022年には、サステナビリティ・ESG関連の開示フレームワークの国際的な統一と強制適用に向けた動きが加速し、TCFD提言に基づくISSBの基準が整備され、日本企業においても対応が求められるようになった背景を明らかにした。
これらの研究を通じて、企業が環境・社会課題に対する取り組みを透明かつ効果的に開示することの重要性を明確にした。これにより、企業とステークホルダー間の信頼関係の強化が持続可能な社会の実現に向けたステップへと繋がっていくことを示すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度においては予定通り学会発表も行い、基礎的な情報をまとめた刊行物も一編執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
1期目で数値化したデータベースに基づきモデル構築を行い、プライム市場に上場している3月期企業をサンプルに検証・考察していく。この段階では、適用前:2020年3月期~2022年3月期、適用後:2023年3月期~2024年3月期として、開示義務化前後の差分の差分析を行う予定である。予備的検証・考察を踏まえて、国内・海外の学会報告(ヨーロッパ会計学会もしくはアメリカ会計学会など)での成果報告を行う(ただし、成果発表は2025年度になる見込みである)。
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Causes of Carryover |
2024年度当初に研究に必要な資材の調達を行うため、一部の予算の繰り越しを実施した。
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