2023 Fiscal Year Research-status Report
社会学を基盤とした批判的認知症研究の構築と「認知症社会」の記述・評価・構想
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23K01767
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 高志 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40432025)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 予防 / 共生 / 備え / 批判的認知症研究 / 包摂/排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、批判的認知症研究の主要な論文や著作を読みながら、2年目以降にコンタクトを取るべき重要な研究者や研究のリストアップを行った。こうした検討作業をベースにイギリスやオーストラリアの海外研究機関と連絡をとり、2年目以降の文献調査・現地調査や共同研究の予定を立てている。こうした準備作業と並行して、新聞記事検索とテキスト分析に基づいて日本社会における認知症予防の論理のトレンドについて分析し、国内学会と海外の学会での学会報告を行なった。また、老年精神医学の領域で社会学的観点に基づく認知症の排除と包摂の歴史に関する研究を報告し、現場の実践者などからコメントをもらい議論を深めた。 そのほか、認知症研究を社会学や医療社会学の研究の中で位置付けるために、社会学理論の検討し直しを行った。具体的には、認知症現象を分析する上で重要な概念であるスティグマに関して、アービング・ゴフマンの学説を検討した解説の執筆や、医療社会学・社会学の理論的枠組みを整理した解説書の(共著での)執筆を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主眼は、2年目以降の海外での情報収集や調査と、それを踏まえての日本社会の分析であるが、その実施に向けて十分な準備作業を行うことができた。また、日本社会の認知症の排除と包摂に関する現状について、限定的な形であるが、認知症予防という現象に注目して、テキスト分析を進めて研究報告を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に行った学会報告を論文化するとともに、新聞記事などのテキストデータの範囲を広げて分析を発展させていくことが一つの目標である。また、2年目となる2024年には海外研究機関に長期滞在して研究を行う予定であり、海外での情報収集や調査、関連研究者との共同研究等を進めていくことを試みる。
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Causes of Carryover |
報告を予定していた国際学会がオンライン形式での開催だったため、旅費の支出が抑えられた。また、資料収集作業においては、これまで収集していた資料の講読や分析に集中したため、想定よりは購入費用を支出できなかったため。次年度以降は、海外での資料収集等のために予算を用いていくが、円安基調のため、当初見込みより費用が高騰する可能性があり、本年度未使用だった分を当てていくこととなる。
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