2023 Fiscal Year Research-status Report
A Sociological Analysis of the Upper Middle Class Formation in Contemporary Japan
Project/Area Number |
23K01787
|
Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
児島 真爾 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (30734941)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 社会階層 / 階級 / 社会不平等 / 日本 / 上流中産階級 / 文化資本 / 社会関係資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、所得上位10%層に象徴される所得者層の増加を前提に、これら中上位所得者層がいかにして新しい上流中産階級(upper middle class)を形成しているのか、その階級生成プロセスを明らかにすることにより、グローバル時代における階級形成にまつわる社会理論への貢献を試みることにある。“階級(social class)”を経済的資本の所有の多寡(class as an economic category)という観点からのみ捉えるのではなく、経済的資本の所有を前提とした階級形成的行為の実践プロセス(Wacquant 1991)として捉える。本研究課題の重要性は、これまで欧米社会中心に分析が進んできた上流中産階級の形成について、日本を事例として取り上げ、イデオロギーとしてのメリトクラシーの覇権やジョブ型賃金制度の拡大により増加している経済的カテゴリーとしての中上位所得者層が、いかなる社会的プロセスを経て階級的地位の確保に従事しているのか、グローバリゼーションと階級形成にまつわる社会理論に貢献することにある。 研究初年度の令和5年度では、①中産階級の形成に関する先行研究を網羅的に読み込む、②階級分析に関する理論書を読み込む、③事例研究の対象を選定する、④令和6年の学会発表の準備をすることを研究実施計画として盛り込んでいた。 令和5年度の研究成果としては、①から③を建設的に実施した。欧米およびアジア地域における中産階級形成にまつわる先行研究の収集・読み込みを実施し、階級形成にまつわる理論書も講読した。2023年10月には東京に出張し、調査対象となる所得上位10%層の選定を行った。しかし、④にあった“令和6年の学会発表に向けたグローバル上流中産階級の論考を書き上げ、国際学会に論文を投稿する”という目標の達成には至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にも記した通り、令和5年度の研究初年度では、①中産階級に関する先行研究を網羅的に読み込む、②階級分析に関する理論書を読み込む、③事例研究の対象を選定する、④令和6年の学会発表に向けて主に統計と先行研究に基づいて日本のグローバル上流中産階級の論考を書き上げ、米国社会学会(ASA)もしくは米国アジア地域研究学会(AAS)に投稿することを計画していた。 進捗状況については、「やや遅れている」とする。上記に記したとおり、計画計画の①から③については概ね実施し、建設的に文献講読を進めている。令和6年度においても継続的に実施する予定である。しかし、④国際学会発表に向けた論文の執筆および投稿については、実施できなかった。先行研究の読み込みは継続的に進めてはいるものの、データの収集や分析は十分に進んでおらず、論文の執筆までには至らなかった。加えて、当初予期していなかった点として、本研究課題以外の研究について、論文の執筆・投稿・国際学会での発表準備に研究時間と労力を費やすことになった。本課題以外について論文を海外研究雑誌に投稿し、国際学会において発表が予定されているが、本研究課題については当初予定していたほど研究が進んでいないと言える。本研究の2年目となる令和6年度については、2024年度秋学期における1セメスターのサバティカル期間が予定されている。研究の遅れを取り戻すため、在外期間を有効活用し、本研究課題を前進させる意向である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、令和6年度では、“秋学期のサバティカルを活用し、Leiden大学およびInternational Institute of Asia Studiesに滞在し、階級とグローバル化にまつわる専門家らと意見交換しながら理論的考察を深め、データ分析を進める”としていた。 研究計画の変更事項として、Leiden大学およびInternational Institute of Asia Studiesに滞在するのではなく、University of Auckland (NZ)のNZAI (New Zealand Asia Institute)に在籍し、研究を遂行することとなった。変更の理由としては、サバティカル期間を活用してデータ収集を行うことにある。日本の中上位所得者層は、上流中産階級的地位の獲得戦略として、海外に移住したり子供を海外に留学させることで“グローバル文化資本”を獲得し、他者との差異化をはかることが先行研究で明らかになっている。日本人にとって主な移住先・留学先として知られているのがオセアニア地域である。NZAIに籍を置くことで、オセアニア地域に移住した家族や留学中の学生に聞き取り調査を行うことを可能にするため、サバティカルの滞在先をNZに変更した。Visiting Scholarとして、NZAIにおいて2024年10月から2025年3月までの受入が決定している。 この変更により、本研究課題の目的に変更が生じるわけではない。研究計画の変更は、研究課題の遂行に資する内容となっている。令和6年度はサバティカル期間を有効活用し、データの収集および分析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
令和5年度研究実績の概要および進捗状況に記したとおり、先行研究の読み込みを主に実施し、データの分析および研究論文の執筆、学会発表の準備までは至らなかった。結果、当初予定していた人件費・謝金およびフィールドワークのための旅費について出費が生じなかった。結果、令和5年度の使用額が当初の予定より少なく、令和6年度への繰り越しとなった。令和6年度においてはNZにおける在外研究を予定しており、サバティカルを有効活用する形で研究を進めて繰越の研究費を執行する予定である。
|
Research Products
(2 results)