2023 Fiscal Year Research-status Report
ICT化・Withコロナ時代における労働の二極化:感情労働論の観点から
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23K01805
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
崎山 治男 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (20361553)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 感情労働 / 感情資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はグローバル化とICT化、そしてコロナ禍という現代社会の中で、労働とその金銭的・心理的報酬が二極化されていくプロセスの分析を目指す。一方では単純な感情労働がアウトソーシングされたりマニュアル化されたりする中で、報酬ややりがいの低下がある。そればかりかAIにより労働そのものがヒトから代替される。他方で、中枢での企画立案・高度な感情労働による職務へのやりがいや報酬の獲得があり、そこでの自己実現に向けたスキルの獲得が煽られる。その実態を明らかにする中で感情労働という視角からの労働の二極化と高度なコミュニケーション・スキルへの煽りを分析し、現代社会でヒトが「労働」に動員される社会形成のありさまを明らかにすることを質的調査を元にして明らかにすることを目的としている。 本年度はそれに向け、コールセンター業務と旅行業の中枢部に携わる労働者10名ずつに、質的な調査を試みた。そこで浮かび上がってくる像は、感情労働がもたらす精神的な困難に耐えつつも、感情のやりくりを上手くしている技法であった。また同時に、やりがいや報酬という点では、顧客からの好意的応答が主であり、差はあまり見られなかった。だが、他方では顧客や同僚とのやりとりの中で、中枢部にいる人々の方がやりがいを得ていることが確認された。 感情労働の自己への成果については、肯定論と否定論の双方がある。前者は顧客とのやりとりでの楽しさを主とし、後者は感情の抑圧を主とする。この点についても理論的な整理を試み、調査データとの接合を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質的調査に協力して頂ける企業が難航したことと、23年度の11月~2月に腰のヘルニアを患ったため、調査が計画より進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
質的な調査を継続することにより、単純な感情労働と複雑なそれとの特徴をさらに精査する。まだ同時に、それをもたらす要因として感情労働論のさらなる精緻化、並びに感情労働をする能力としての「感情資本」の理論構築を目指す。
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Causes of Carryover |
質的調査については、23年度限りの他の民間助成金を活用したことと、実施状況に記した調査の遅れがある。24年度の調査費用としたい。
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