2023 Fiscal Year Research-status Report
避難所等における災害派遣福祉チームの「活動実態」調査と「事例教材」開発
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23K01837
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
鈴木 俊文 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 教授 (60566066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 隆博 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (70827237)
今福 恵子 関西国際大学, 保健医療学部, 准教授 (80342088)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 災害福祉支援チーム / DWAT / 避難所 / 災害時要配慮者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、災害発生時に一般避難所等において災害時要配慮者(高齢者、障がい者、子ども等)を対象に、災害関連死等の2次被害防止を目的に支援を行う「災害派遣福祉チーム(以下、DWAT(Disaster Welfare Assistance Team)登録員)」の養成、活動に有用な教材開発に取り組む3ヵ年計画の研究である。本研究では、地震等に加えて近年増加傾向にある豪雨災害等を起因とする災害対応に着眼している。 研究初年度である当該年度は、筆者らがこれまでに実施した静岡県内における一般避難所での派遣支援活動を経験したDWAT登録員のインタビューデータを分析対象に、避難所活動の具体的内容を類型化する分析を行ったうえで、詳細な活動内容を捉えるためのインタビュー調査を実施した。これにより、本研究で捉えるべき支援活動の観点をフェーズとして仮説的に類型化することができた。 尚、本研究の目的は、災害時におけるDWAT登録員の具体的な支援活動を、期待される役割や対応課題等をふまえて明らかにすることである。加えて、本研究の成果物として、豪雨災害等による「局所的被害・短期的支援」の特徴をふまえた事例集を作成することを目指している。この目的のうえでは、今後、DWAT登録員を主体にした支援活動の事例性を重視した分析を加えることも必要である。今後、分析テーマに基づく質的内容分析を重ねることにより、フェーズとしてのプロセス化と、対応事例に基づく具体的な実践を構造化することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は災害発生時に一般避難所等において災害時要配慮者を対象に、災害関連死等の2次被害防止を目的に支援を行うDWAT登録員の養成、活動に有用な教材開発を行うものである。このために必要な研究活動は、①DWAT登録員を対象にしたインタビュー及び支援活動の資料収集、②インタビューデータ及び収集した資料の内容分析、③分析結果に基づく教材作成、の3段階である。 当該年度は、①に必要なインタビューと資料収集を、過去、DWAT登録員の派遣が行われた豪雨災害による被災地での支援活動を経験した3府県(岩手、岡山、静岡)のDWAT登録員を対象に実施した。現在は、この結果をもとに、DWAT登録員の一般避難所における支援活動の開始から終結に至るまでの具体的な支援内容をフェーズ化する分析から、具体的な支援事例をもとにDWATに期待される役割とを絡めた考察と、支援活動に必要な支援連携に着眼した分析(支援機関や支援チーム等との具体的な連携内容や課題に着眼した分析)を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度、豪雨災害等による被災地での支援活動を経験したDWAT登録員へのインタビュー調査、関連する資料収集は概ね完了し、現在は、DWAT登録員の活動の場や内容、関係機関・多職種との連携等に着眼した分析から、事例性を重視した機能類型と支援プロセスの構造化をはかっている。この過程において、今後必要な研究の推進方策として、次のことが明らかになった。 1)事例集の作成に必要な経験的エピソードの確定 本研究の成果物は、DWAT登録員の役割や活動内容を文脈化した活動事例集を作成することである。この事例集は、本研究における分析結果をDWAT登録員の役割や活動内容として捉えた結果として記述するものであり、DWAT登録員の経験的エピソードを中心に構成することも必要であると考えている。このため、事例集作成にあたってはインタビュー結果を引用することが想定されるため、次年度は引用するエピソードを確定させ、個人情報保護等の対応に加えて、インタビュー協力者に結果を開示しつつ内容確認を進めていく。 2)局所的・短期的支援としての特徴的課題を扱う分析の必要性 本研究は、地震等の自然災害に加えて、近年多発している台風等豪災災害による被害とそれに対応した避難所支援活動に着眼した分析から、「局所的被害・短期的支援」の特徴をふまえた事例集を作成することである。この目的のうえでは、「広域的被害・長期的支援」の事例を比較材料に、本研究の成果を捉え直すことも重要である。今後は、これに必要な分析を加えるための方法についても検討する。 尚、本研究の対象であるDWAT登録員は、2024年1月1日に発生した能登半島地震の被害により、現在も多くの登録員が被災地での支援活動を継続中である。今後必要なインタビューデータの確認や、追加調査のスケジュールについては、十分配慮して進めていく。
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Causes of Carryover |
当該年度は、DWAT登録員対象にしたインタビュー調査、関連する資料収集等を行う調査が中心であり、これにかかわる経費として、調査旅費、インタビューデータを逐語化するための機材と費用を計上していた。しかし、DWAT登録員を対象にしたインタビュー調査では、調査対象者の意向により、すべてオンラインで実施されることになったため、これに必要な旅費を使用しなかった。加えてインタビューデータの逐語化にあたっては、専門用語や略語確認、用語修正を含む分析データの整理を研究者自身で行う必要性が生じ、インタビューデータの逐語化に必要な経費が当該年度では発生せず差額分が生じた。次年度は令和5年度に収集したデータをもとに、必要な分析と教材開発に必要なエピソードの確定等を進め、これに必要な逐語起こし費用にあてる。加えて、当該年度の成果により、本調査結果と比較するための事例を加える必要性も生じたため、当該年度の未使用額については、この事例収集に必要な調査旅費に充てる予定である。
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