2023 Fiscal Year Research-status Report
Violence against women and health legislation: empirical human rights law approach
Project/Area Number |
23K01859
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Research Institution | Shoin University |
Principal Investigator |
松浦 広明 松蔭大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60751914)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 女性への暴力 / 優生学 / 妊産婦死亡率 / 気候変動 / 先住民族人口 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究初年度という事もあり、各国の法制度が、女性に対する暴力と健康に与える影響の分析と共に、女性に対する暴力と健康に影響を与えうる様々な要因について、分析し、論文を発表した。①人口学の優生学的起源に関する事、②コロナ禍、あるいはそれ以前から始まった妊産婦死亡率の再上昇に関して、妊産婦死亡率の削減をどのような指標で測るべきかの提言、③気候変動下における生物人口学研究の役割、④先住民族人口を調査する際の注意点などについて論文を執筆した。これらは、女性に対する暴力や健康を分析する上で、その国の制度、健康アウトカム、女性への暴力に影響を与える原因の究明、サブポピュレーションの分析をする際に非常に有用である。最初の論文は、人口学の優生学的起源に関して、直視すべきとするRebecca Sear氏のPopulation Studiesの論考を支持し、そのためのアクションの必要性を論じた。20世紀、人口学は、優生保護法の成立に繋がる一連の研究を通じて、人権侵害に加担した。そのような反省を踏まえ、倫理学・歴史学・人権研究の視点で再考する必要性を強調した。次の論文は、妊産婦死亡率の計測が正しく行えない中で、MDGs Target 5Aの「1990年から2015年の間に、妊産婦死亡率を4分の3に減らす」のような減少割合ではなく、具体的な閾値を設定するSDG Target 3.1の「世界の妊産婦死亡率を出生10万人当たり70人未満にする」と言う目標設定は不適切であると論じた。三つ目の論文は、昨年度、COP28で採択された「気候変動と健康に関する宣言」を念頭に、生物人口学がどう分野にどのように貢献できるかを論じた。最後の論文は、先住民族人口を調査する際の注意点について、先住民族の権利に関する国際連合宣言などを踏まえコミュニティーベース・参加型アプローチ(CBPA)の重要性について論じた。今後は、これらの知見を活かし、分析をさらに進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究関心が、女性への暴力や健康に対する気候変動の影響に若干シフトしたが、法制度との関係に関しても十分な分析を行えるデータを収集しているので、計画には大した遅れはないものと考えている。本年度は女性への暴力や健康に影響を与える様々な要因に関してより広い視野で分析を行った。今後はメインの部分の実証分析を進め、形にしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
特に大きな変更はなく、これまで通り、法制度が女性への暴力と健康に与える影響について分析していく。その際に、気候変動や紛争などの外生ショックに注目した方が良いのか?あるいは、妊婦や先住民族女性と言ったサブグループの女性に対する暴力や健康を別途見た方が良いのか、今年度の研究結果を参考にして、検討していきたい。
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Causes of Carryover |
Windows10のサポート終了期限が2025年のため、Windows11に買い替えるよりも、慣れてるコンピュータで作業する方が効率が良いと考え、購入を先延ばしにしてしまった。来年度には買い替えが必要とになるため、来年度までに購入する予定である。
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