2023 Fiscal Year Research-status Report
東北地方の明治期と昭和戦前期の災害支援と農村社会事業の実践内容の歴史研究
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23K01939
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
元村 智明 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (60340022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 圭 東北学院大学, 情報学部, 講師 (40770532)
兎澤 聖 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (70760586)
岡本 周佳 関西学院大学, 人間福祉学部, 助教 (20906292)
井川 裕覚 上智大学, 実践宗教学研究科, 研究員 (20909189)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 災害福祉 / 慈善事業 / 農村社会事業 / 東北農村セツルメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は災害と福祉の関連性に関する社会福祉の歴史研究である。被災者への生活支援の歴史的展開を中心に解明、分析するために東北に限定し近代日本の慈善事業段階の生活支援問題と社会の現代的展開の中の「社会事業」段階の農村社会事業の位置づけを明らかにするものである。初年度は、基本文献および史資料の蒐集と整理、所属学会での発表準備を進めた。研究推進の効率化からオンライン定例研究会を開催し、第16回研究会から第24回研究会まで実施して研究進捗状況を報告し議論を重ねた。 研究活動は、2023年8月25日から28日に研究分担者の兎澤聖及び研究協力者の菊池義昭により石井記念友愛社への東北凶作に関する岡山孤児院の取り組みを確認する史資料調査を行った。社会事業段階は研究分担者の井川裕覚が「昭和恐慌期の賀川豊彦による農村社会事業への転換」を日本宗教学会第82回学術大会(東京外国語大学2023年9月9日)で報告し、さらに「昭和恐慌期の賀川豊彦による農村社会事業への転換」を『宗教研究』第97巻別冊(第82回学術大会紀要特集2024年3月209-210頁)に掲載した。研究代表の元村智明は慈善事業段階の宮城県窮民の報道動静の分析を進め、研究分担の岡本周佳は社会事業段階の自由学園・東北農村セツルメントについて社会事業史学会第52回大会(東洋大学2024年5月11、12日)に向けて研究会内で議論を重ねて期日までに大会発表申込を終えた。当初の研究組織構成員ではない髙梨友也は、本研究会で1年間の議論を重ねて山形県の松田甚次郎による取り組みの分析を進めて前同第52回大会の発表申込に至った。 これまでに蒐集を終えていた地域新聞資料『河北新報』及び『東北新聞』の画像走査とその情報の共有を図った。さらに不足情報を補うため元村智明は、1906年1月から6月までのマイクロフィルムの『河北新報』と『東北新聞』の精読調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究組織として、慈善事業を分析するグループと社会事業を分析するグループに分かれて研究を進めながら、児童保護の問題や宗教と救済の関連性、自由学園・東北農村セツルメント、社会事業理論、社会事業思想について議論を進めていく計画であったが、予想以上に問題が多岐にわたることが確認でき、論点整理が十分ではなかった点にある。 東北三県凶作の窮民化は、宮城県下の窮民状況とその実相報道が明らかになりつつあるが、他方で福島県や岩手県については、公的記録文書の入手しかできていないために、実相報道が明らかにできていない。 岡山孤児院の取り組みについても史資料の確認と蒐集を行ったが、他方で博愛社の取り組みについては、地域新聞にその記述を見出すことが出来ていないために、体系的な整理や議論に至らず学会等における発表準備には至っていない。 仏教と救済の関連性についても明治期東北凶作については十分な分析が進められていないが、他方で昭和期の賀川豊彦の農村社会事業の分析を進めることが出来ている。 東北の農村社会事業の必要性については、昭和初期の生活支援にその必要性を見いだすのではなく、明治38年東北三県凶作に見いだすことが出来る可能性について地域新聞の実相報道から確認することにとどまるが、社会事業史学会第52回大会での問題提起を行うべく発表申込を行った。同様に、昭和9年東北凶作と自由学園東北農村セツルメントについては、セツルメントのなかでも特筆ができる活動であると分析しつつあり、戦前日本社会におけるセツルメント活動の多様性を見出すことができる可能性があるために、前同第52回大会での問題提起を行うべく発表申込を終えた。 なお、東北三県凶作における農村社会事業思想について杉山元治郎の議論形成については、引き続き研究会内で討議を進めて学会発表で問題提起が出来るように議論を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究推進体制をより強化するために、1年間におよぶ史資料蒐集を前提にしながら、2年目はさらに史資料の蒐集活動を進めることで、毎月の定例研究会日を半固定化した研究報告の場を設定し、少なくとも年度内12回の研究会開催の目標を設定して取り組むこととした。なお、この間に所属する学会等での発表申込を積極的に行い、論文投稿を目指すこととした。 なお研究2年目の年末迄には、研究完成年度となるさらに1年後を見据えて、あらためて研究成果物について検討することとした。当面の目標としては、各自の研究成果物として論文執筆に加えて、これまでに明らかになっていなかった未見の史資料の公開を見据えた史資料編纂を目標とすることが確認したた。 研究計画の2年目として、研究計画書に記載どおりに、基本的には困窮化した窮民への救援活動の内容とその効果の解析、慈善事業施設の県境を越えた貧困児収容の取り組みとその後の養護実践について分析を進め、さらに農村社会事業の災害支援における特質の解明に取り組む。 そのために、先行研究の収集と紹介、史資料の蒐集を継続しながら、研究会で議論を重ねながら、研究成果を学会等において問う。そのために、研究分担費用を1年目より多くすることが確認され配分予定とした。
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Causes of Carryover |
戦前に公刊された史資料の蒐集に際して、比較的に低価格で文献史資料の蒐集のための購入できた点があり、他方で史資料蒐集のための十分な文献史資料調査のための研究活動が実施できていない点がある。そのため、次年度はより計画的な文献史資料の購入と文献史資料の調査を組織的に進める。 なお、これまでに未見であった史資料や災害に関する新聞紙面の救援動静の実相報道を入手しつつあるので、史資料の全体像を見極めながら、近現代の慈善事業と社会事業における災害と福祉の一端を理解する上で必要不可欠な史資料の翻刻作業を行う検討をしている。そのため、論文集だけでなく史資料集の編纂作業が重要な研究成果の一部となる。
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