2023 Fiscal Year Research-status Report
においプロファイルに基づく抗酸化物の食品酸化促進挙動の解明とその制御
Project/Area Number |
23K01966
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
石川 洋哉 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (00325490)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 抗酸化物 / 酸化促進 / 超高速GC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、天然抗酸化物により惹き起こされる食品成分の酸化促進現象、今回は特に、脂質酸化分解物である「におい(異臭)成分」の動的挙動(においプロファイル)に着目し、多種多様な抗酸化物を用いてそれぞれの酸化促進効果の有無とその挙動を、最新のにおい分析装置(超高速GC、におい嗅ぎGC-MS等)を用いて網羅的に解析し、そのメカニズムを解明するとともに、抗酸化物の併用による酸化促進(異臭増強)の制御を試み、科学的根拠に基づくにおい劣化制御技術を新たに提示することを目的としている。本年度は、まず脂質の酸化に伴う異臭の生成挙動の確認と数種の抗酸化物添加効果を確認した。リノール酸エマルジョン溶液をモデル溶液として、各種異臭(揮発性)成分の生成挙動を37℃(酸化促進剤AAPH添加)、あるいは50℃(酸化促進剤無添加)で21日間確認した。その結果、いずれの温度条件下でも、およそ7-14日間で各異臭成分の生成がピークを迎え、その後減少する挙動が確認された。続いて、数種の抗酸化物の添加試験を実施した。その結果、ロスマリン酸では37℃(酸化促進剤AAPH添加)保存時に、14日目に異臭成分の増加が確認され、主要異臭成分であるhexanalのGCピーク面積は、無添加時の2倍近くまで増加していることが判明した。さらに、14日目以降のGCピーク面積はロスマリン酸濃度の増加に伴い増加する傾向も観察され、リノール酸の酸化を促進している可能性が示唆された。同様の傾向が他の抗酸化物でも観察された一方、ミリセチンなど一部の抗酸化物では、21日間保存後も酸化が抑制されていることも確認された。今後、さらに詳細な検討を行い、酸化促進の可能性を探るとともに、その抑制挙動の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究初年度であったことから、リノール酸由来の異臭の生成挙動を複数条件下で確認するとともに、数種の抗酸化物での添加試験を実施したところである。2種の酸化条件下での異臭生成を超高速GCシステムにより確認し、数種の抗酸化物を用いた劣化抑制試験を実施している。まだ限られた条件下ではあるが、順調に成果を上げており、脂質由来異臭成分の生成挙動を確認し、抗酸化物の添加効果を確認するに至っている。抗酸化物による酸化促進挙動の把握に向けて、まだ一部ではあるが興味深い知見も得られている。今後、抗酸化物の種類、添加条件を詳細に検討する予定であり、抗酸化物による食品のにおい制御技術の確立に向けて、順調に研究が進展していくものと考えられる。研究の方向性等は特に修正の必要はないものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2023年度の研究成果を基に、超高速GC分析によるリノール酸由来異臭の生成挙動を更に経時的な挙動を詳細に検討する。23年度は、限られた時間間隔の中での異臭生成挙動の確認にとどまっていたため、測定時間の間隔を短くするなど工夫しながら、詳細な挙動の確認を行いたい。さらに、対象とする各種抗酸化物に関しても、ポリフェノール系の一部の化合物の効果しか検証しておらず、対象抗酸化物の範囲を拡大していく予定である。さらに、本研究で用いる超高速GCでは、検出された揮発性成分の分析パターンにもとづいて多変量解析等の統計解析が可能である。本装置により、各種抗酸化物による異臭生成抑制・促進の挙動をより詳細に検討することが可能と考えられる。具体的には、各種抗酸化物使用時のGC分析結果をもとに、揮発性成分のパターンに応じた主成分分析が可能であり、各種抗酸化物による効果を視覚的にパターン分析することが可能になると考えられる。さらに、今後は抗酸化成分2成分を同時に使用した場合の効果も詳細に検討する予定である。具体的には、各抗酸化物による異臭促進・抑制挙動をもとに、Median effect analysisを行い、相乗効果の「有無」と「程度」を各濃度レベルで詳細に解析することを試みることにより、抗酸化物2成分混合系での、相乗効果の発現挙動を詳細に検討する予定である。一連の解析を通じて、抗酸化物による酸化促進(異臭増強)の制御を試み、科学的根拠に基づく食品のにおい劣化制御技術の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
研究成果は着実に得られているものの、期間中、研究装置の故障等の予期せぬ事態もあり、研究実施予定が一部変更になった影響等により、経費の一部を繰り越す予定となっている。予定が次年度になった研究内容に関しては、継続して実施する予定である。特に大きな変更点はない。 使用計画) 次年度使用額となった金額は、物品費、その他(装置のメンテナンス費)として使用予定である。具体的には、超高速GCシステム、におい嗅ぎGCMSのメンテナンス費用、および装置を稼働させるための消耗部品に使用する予定である。また抗酸化物および、抗酸化試験に用いる試薬一式(エタノール等の溶媒、反応試薬)および関連のピペット、サンプルビン、ガラス器具など一式を次年度に購入し、使用する予定である。
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