2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on the History of Textile Techniques: Focusing on the Domestic Production of Textile Materials
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23K02026
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
菊池 理予 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 主任研究員 (40439162)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 染織技術 / 原材料の国産化 / 無形文化財 / 選定保存技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来の「染織史」研究を、我が国における染織品の「原材料の加工技術」やその生産地に関する情報を関連させることで再考し、新たに「染織技術史」として構築することを目的とする。 特に本研究では、研究代表者がこれまで整理を行ってきた「無形」の視点から整理した原材料の情報を、「有形」である染織品を基軸に研究されてきた染織史に応用することで、新たに「染織技術史」として構築する。 そこで、染織品の原材料に注目し、①原材料の特徴と加工技術の関係性について検証したうえで、②美術館・博物館に所蔵された着用者の明らかな染織作品を調査し、③その原材料を利用することが我が国の染織技術の発展、衣生活にとっていかなる意義があったのかについて考察する。また、各地域の特産物となる染織品の原材料が、我が国の人々の営み、染織文化にとっていかなる意義を持つかについても考察する。 研究初年度である本年度は、文献調査を中心として研究を進めた。原材料の国産化を考えるにあたり、身近な原材料を使用する可能性が高く、かつ多くの技法に用いられる「糊」に注目した。『染料植物譜』(昭和12〈1937〉年)に掲載されている慶安4(1651)年以降に刊行された染織技法書から、糊に関連する項目(122件)を抽出した。抽出された記載を糊の原材料や使用用途について、整理し「【資料紹介】近世染織技法書における糊―染織技術保護における原材料の意義の検証に向けてー」『無形文化遺産研究報告第17号』で発表した。 また、染織品の色材について染織品保存科学的な視点からの研究が必要と考え、研究組織に加わってほしい研究者に対して、本研究について説明する機会を設けた。次年度、研究組織の変更を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時より研究費が削られたことで、現地調査や調査機材の購入について変更を行った。次年度も文献調査に注力し、現地調査については効果的な作品を慎重に選定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、染織品を制作する際の原材料の「加工技術」に注目し、以下の項目について調査研究を行う計画である ①我が国における原材料の生産工程と産地に関する調査。②現在に受け継がれた染織技術における原材料加工技術、及び利用に関する調査。 ③近世染織品に利用されていた技法、及び原材料の物性的特徴と加工技術の調査。④近世おける衣生活と染織技法の関わり。以上を踏まえたうえで、本研究では上記①②③④の項目につき、1)文献調査、2)現地調査、3)作品調査の方法によりアプローチする。 これらのうち、1)文献調査は、これまで研究代表者が収集した文献から原材料に関する項目について整理を行う。本年度は1)文献調査を中心に行い、染織技術に多用され、おそらく国産のものを多く利用しているであろうと想定される「糊」について、近世染織技法書の記述に注目し、整理を行った。次年度以降は、都道府県史に記された原材料の出荷に関する情報と原材料の利用地域の技法について整理を行うことを予定している。その上で、各技術を全国的に俯瞰的な視野で考察できるよう、『和漢三才図会』等に見られる特産物の記述から原材料の優劣や利用に関する記述の整理を行うことで、染織技術の実態的な解明に努めたい。 次年度以降は、1)文献調査の結果を踏まえて、2)現地調査では、特に、当該産地の原材料の加工の工程について整理し記録する。3)作品調査は、1)文献調査と2)現地調査によって加工技術が明らかとなった原材料を用いている技法を選定し、その技法を用いた染織品に関する調査を行う。
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Causes of Carryover |
研究費の決定に伴い、調査機材の購入について見直しを行い、次年度以降に現地調査や作品調査を行うように調整した。次年度以降は研究分担者を追加し、調査機材についてもそれぞれの機関が所有しているものを使うことで、現地調査や作品調査の回数を増やせるように計画を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)