2023 Fiscal Year Research-status Report
果肉の赤いクッキングアップル‘HFF60’の果肉熱崩壊性機構の解明と最適栽培法の確立
Project/Area Number |
23K02032
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
松本 和浩 静岡大学, 農学部, 教授 (60508703)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 栽培技術 / 赤果肉 / 細胞壁 / 調理 / ジャム / ペクチン / 成熟 / テクスチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年に弘前大学が品種登録した赤果肉リンゴ品種HFF60は、既存の日本品種と異なり、熱崩壊性を有する。しかし、熱崩壊性は不安定であることから、そのメカニズムを解明し,熱崩壊性を安定させることが必要不可欠である。さらにHFF60は、9月下旬に収穫される中生品種であることから、近年の温暖化により果肉着色が不安定であることも課題となっている。本研究は、これらの課題解決のために、以下の2つの実験を行った。 第一の実験は、樹勢の強弱(マルバカイドウ台木/M26台木)、結果枝の長さ、人工受粉の有無、植物成長調整剤(ジベレリン/MCP)処理の有無による果実品質への影響を調査した。樹勢の強弱、結果枝の長さ、人工受粉の有無では果実品質に特筆すべき差異は認められなかった。一方、ジベレリン/MCPを処理した果実の品質は、過熟期においても硬度が低下することなく、高い硬度を維持した。 第二の実験は、成熟程度によって異なる熱崩壊性とその要因解明についての検討を行った。果実のサンプリングは、適期とみなされた9月20日とその前後2週間の早期・中期・後期の3期で行ったところ、熱崩壊性がみられたのは中期の一部と後期の果実のみであった。中期は熱崩壊性にばらつきが見られ、硬度のばらつきが大きく、硬度が低いものでのみ熱崩壊がみられた。 以上の結果から、HFF60の栽培条件について、ジベレリン/MCPの処理は、果肉硬度の維持には有効であったが、処理に伴う1カ月程の収穫期の後進は果肉着色を改善しなかった。一方、HFF60の熱崩壊性は、果肉の硬度が低下した果実のみでみられることが明らかとなった。なお、歴日に基づき、3期にわけた果実では、それぞれの収穫期の果肉硬度に大きなばらつきが発生した。そのため、来年度は同一日に一斉収穫した果実を硬度別に分類し、硬度と熱崩壊性との関係を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにない気候のため,果肉が着色せず,果肉硬度の低下も著しかったが,最低限のデータ収集は行えた.このような,気候変動に備え,2年以上同様の実験が行える備えをしていることから,次年度,1年目の結果を踏まえた発展した実験が問題なく行える予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ペクチン、ヘミセルロース、セルロースなどの各細胞壁成分の分析を進めていく予定である。また、2年目となる2024年度は、気象の影響を調査するため、2023年度と同様に熱崩壊性の機構解明に関する実験を行う予定である。なお、そのサンプリング方法は、2023年度の実験の結果より、成熟期を収穫日によって分類する方法を用いるのではなく、同一日に一斉収穫し、果肉硬度によって成熟期を早熟・適熟・過熟の3期に分類することが有効的であると考え、サンプリング方法を改善して実験に取り組む予定である。さらに、得られた成果については、12月に行う市民に向けた講座において、紹介する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたガスクロマトグラフィーの購入ができなかったため,代替の機材の購入を検討しているため.
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