2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K02148
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
笠井 尚 名城大学, 人間学部, 教授 (10233686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀部 篤樹 愛知産業大学, 造形学部, 准教授 (50983186)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 学校図書館 / 学校施設 / 公共図書館 / 調べ学習 / 読書 / 読解力 / 学校司書 |
Outline of Annual Research Achievements |
愛知県I市のIM小学校で、改築新校舎(低学年棟)が竣工した。多目的スペースを活用する設計助言を行い、これを活かして図書空間ができた。I市立図書館のAVコーナー改修を支援して、子どものための調べ学習のコーナーが完成した。次年度より、学校司書や市立図書館司書と協力して、これらの空間の運用を図る。 調査においては、岡山地区の公共図書館事例等と浦安市立図書館の子どものコーナーはじめ東京地区の公共図書館などについての情報収集を行った。岡山では、著名な児童文学研究者・翻訳家である脇明子氏を訪ねて、直接、ご教示をいただくことができた。本に対する子どもたちの構えに関して具体的な目標がどうあるべきか、重要な示唆を受けた。脇氏が代表を務めていた「岡山子ども本の会」の活動について会員から情報を得ることもでき、その影響力の一端を市井に見ることもできた。 I市の第三次子ども読書活動推進計画の策定に際して審議会長を務め、学校図書館研究の成果を推進計画の立案に活かすことができた。この計画の実現に向けて、本研究者グループの今後の関与が期待されている。子どもの図書との出会いを促す活動については、本務校学生の協力も得ながら、いくつかの実験的な取り組みを行うことができた。学校連携の取り組みの提案も行った。公共図書館での取り組みを、学校図書館へ活かすこともできると考えられる。①I市立図書館で夏季休業中に実施した子ども司書養成講座の運営を支援した。整備された子どもの読書空間を活かした取り組みではあるものの、読み物指導の専門家の力を活かして、読書リーダーを育てるためのより効果的な講座をつくっていく運営を本研究者が支援できる必要性と可能性が確かめられた。②市立図書館でK小学校の学習活動の成果の展示を企画し、実施を応援した。③市立図書館の子ども読書空間を中心的な場所として、夏休み期間に絵本の展示を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本務校で学内行政上重要な役割に任ぜられたため、これまで実施してきた研究活動が制約を受けることとなった。少なくとも次年度まではこの状況が続くため、ある程度は研究の進行が遅れ気味になるが、やりくりを工夫することで次年度は影響を小さくするようにしたい。 I市の行政担当者との関係は概ね良好であるが、子どもの読書支援の方法上の制約から、効果的な運営改善の取り組みが一部滞るような場面もあった。次年度からは状況が改善される見込みであるが、今年度発生した問題が解決するためには、少々時間が必要になると考えられる。 I市を除くフィールドでは、プロジェクトにおける本研究者らの役割が、今のところ必ずしも継続的・発展的に展開できていない。他地区の公共図書館とは、研究協力関係を新たに進めることができそうな場面も出てきているため、当初計画したものを含め、フィールドの拡大に努力していきたい。 先に示した本務校での役割変化に伴って、日数を要する調査も、今年度は十分には組めなかった。調査計画を調整しながら、情報収集についても力を入れていきたい。 I市の学校建設部門やI市立図書館との協力関係は、順調に継続・進展しているので、子どもの図書館活動については、観察・実験がある程度は進められるようになってきている。児童生徒の主体的な図書館利用を促進するための推進計画を整備することができたので、空間利用を意識しながらその具体的な育成手法を開発することに力を入れたい。 今年度は、研究成果を文字化して出力するところまでは至らなかったが、運営改善の実験的取り組みにおいては、とくに市立図書館との関係の中である程度は進めることができた。そのため、全般の進捗状況としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
I市において、次期の学校改築計画が開始された。今次は、J中学校の計画に隣接J小学校の計画を加味しながら進められることになる。ここでの学校図書館計画は、小中連携を含め、とくに中学生へ向けての空間・運営計画の策定という発展的な課題に取り組むこととなる。令和5年度末に竣工したIM小学校低学年図書館、I市立図書館調べ学習コーナーの利用開始に伴い、新しい運用方法の開発や学校司書・図書館司書支援に取り組む。令和6年度から工事が始まるIM小学校の高学年図書館の利用計画についても、並行して検討を進めたい。 I市立図書館では、読書リーダーとなる子ども司書を養成するための講座が夏季休業中に行われている。この活動は、新しい読書推進計画にも位置づけられており、今後の充実が望まれる。本研究者らは、講座の運営を継続的に支援しているが、ここでの子どもの図書・図書館利用能力の育成は、学校図書館活用のひとつのカギになる要素とも考えられる。講座修了者への追加的対応を提案したところ、今年度、子ども司書クラブの設置につながった。これらのしくみの運用を支援したい。 次年度も、市立図書館での展示やワークショップの企画や学校連携司書の支援活動における探究を進め、図書に関する子どもの活動や学校の取り組み、市立図書館・学校図書館の環境整備とつなげていく実験的取り組みを継続・発展させる。市立図書館の調べ学習コーナーの運用は、スペース先行で進んでいる感もややあるが、企画の立案や子ども司書活動との関連でも有効な活動の場として位置づけることが期待されており、実験的取り組みを進めたい。 調査においては、引き続き、学校図書館、公共図書館、私設図書館、家庭文庫、書店など、本のスペースとそれらを拠点とする本をめぐる活動について広く情報収集する。
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Causes of Carryover |
本務校における本研究者の学内行政上の役割の変化により、研究活動の遂行がやや遅れることとなった。研究協力者においても、他業務での役割が増えたため、チームでの日程調整が少し難しくなったことから、調査の実施が若干遅れ気味になっている。例えば、調査メンバーを組み立てなおして情報収集に臨むことで対処を図りたい。
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Remarks |
愛知県犬山市立犬山南小学校低学年校舎(令和6年2月竣工)(本研究者らの設計支援による)
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Research Products
(2 results)