2023 Fiscal Year Research-status Report
国際規格の調査データを用いた非行に関する国際比較研究
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23K02196
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上田 光明 日本大学, 国際関係学部, 教授 (60588929)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 犯罪学 / 国際比較 / 少年非行 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載された通り、本研究では、国際プロジェクト「国際自己申告非行調査」(International Self-Report Delinquency Study: 以下ISRDと略す)の第3回調査(ISRD-3)の数量的データを用いて、少年非行についての国際比較を行う。本研究の目的は、①日本の少年の非行の実態を把握するとともに、日本の少年非行を説明する犯罪学理論を同定すること、②国際比較を通じて日本の非行の実態を相対的に把握するとともに、日本独自の特徴を理解すること、③研究成果を海外へ向けて発信することである。本研究は、国際規格の大規模非行調査データを用いた定量的研究であり、定量的研究の拡大・拡充と日本の犯罪学の国際的プレゼンスの向上を目指す点に特色がある。
「実態把握および理論的説明検討期」と位置付けた2023年度は、第3回国際自己申告非行調査の諸外国のデータが入手できなかったこともあり、主に理論的説明の検討を行った。犯罪社会学理論に関するこれまでの研究蓄積や現代の犯罪学において代表的な理論的枠組み(緊張理論、文化的逸脱理論、コントロール理論など)に加えて、自由意志と決定論という哲学の論点を導入したモデルを検討した。また、文化的・法律的差異を考慮しつつ、諸外国の非行の実態との比較によりその特徴を際立たせようと試みる日本における非行の実態把握については、データの利用ができない状況で、ポスト・コロナ社会における犯罪・非行動向について検討を行った。また、実施済みの国内調査に至る経緯についての論稿を書き、書籍に所収された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載された通り、国際規格の大規模非行調査データを用いた定量的研究であり、定量的研究の拡大・拡充と日本の犯罪学の国際的プレゼンスの向上を目指す点に特色がある本研究は、国際プロジェクト「国際自己申告非行調査」の第3回調査(ISRD-3)の数量的データを用いて、少年非行についての国際比較を行うものであり、本研究の目的は、①日本の少年の非行の実態を把握するとともに、日本の少年非行を説明する犯罪学理論を同定すること、②国際比較を通じて日本の非行の実態を相対的に把握するとともに、日本独自の特徴を理解すること、③研究成果を海外へ向けて発信することである。 これらの研究目的のうち、2023年度は①と関連し、実態把握と理論的検討が当初からの目的であったため、それ自体としてはおおむね順調に進展しているといえる。特に、理論的検討については哲学分野の議論である自由意志論、決定論という概念を分析基軸として取り込むことにより、社会学の枠組みを超えた大きな進展が達成できたと自負している。ただ、概要でも述べたように、第3回国際自己申告非行調査の諸外国のデータが入手できなかったことにより、文化的・法律的差異を考慮しつつ、諸外国の非行の実態との比較によりその特徴を際立たせるという面での実態把握はできなかったが、現在、国際自己申告非行調査運営委員会本部と諸外国のデータ利用に関して折衝中であり、今年度中には利用可能になる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、交付申請書に記された研究計画としては、以下を予定している。 ①データ分析結果に基づく国際比較の検討(4-5月)、②学会報告内容の検討(6-8月)、③ヨーロッパ犯罪学会(ブカレスト、ルーマニア)への参加(9月)、④学会報告のフィードバック(10月~3月)。 ①については、概要で述べた未取得のデータを入手し、前年度に実施できなかった、文化的・法律的差異を考慮しつつ、諸外国の非行の実態との比較により日本の少年非行の特徴を際立たせる実態把握と併せて、可及的速やかに実施する。②は①の分析結果に基づくもので、③のヨーロッパ犯罪学会で報告する。①~③を通して、来年度の海外学術誌投稿への準備とする。
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Causes of Carryover |
昨年度は諸事情により国際学会(ヨーロッパ犯罪学会、フィレンツェ、イタリア)への参加がかなわなかったため、多くの旅費が残った。本年度も同学会大会への参加に必要な予算は当初より計上しているので、昨年度に使用しなかった旅費は、2024年11月にアメリカ・サンフランシスコで開催されるアメリカ犯罪学会の年次大会への参加に充てる。アメリカ犯罪学会は世界最大の犯罪学系学術団体であり、世界中の犯罪学者が年次大会に参加する。非行の国際比較という目的を持つ本研究にとって、同学会への参加は多くのメリットがあると考えられる。
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