2023 Fiscal Year Research-status Report
Educational Model-Making from Asia: Interactions with the Japanese Model of Schooling
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23K02218
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
恒吉 僚子 学校法人文京学院 文京学院大学, 外国語学研究科, 特任教授 (50236931)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Tokkatsu / 日本型教育 / 教育トランスファー / 文化変容 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
「教育トランスファー」自体は新しいものではないが、従来は、その方向性は西欧先進諸国や国際機関から開発途上国や非西欧諸国へ貸与されるケースが多く、受け手側が自国の社会的資源を用いながら、独自のモデルを生成してゆく道筋が見えてこなかった。こうした中、本研究では、国際モデル化した日本のTokkatsu教育モデルを軸にして、このモデルを一番早く「民」レベルで学校に取り入れたマレーシアとインドネシアにおいて、その再文脈化を分析している。 2023年度においては、マレーシアにおけるTokkatsuの受け入れの一つの中心となってきたマレーシア国際イスラム大学教育学部において、「教育の人道主義化(humanizing education)」国際シンポジウムが開催され、日本のトッカツモデルもここに組み込まれ、本科研代表者も基調講演を行った。特に、イスラムにおけるRahmah(慈悲)と結びつける模索がされた(海外協力者:Mastura Badzis教授)。インドネシアにおいては受け入れ校の自治体の政策のキーワード、ナラティブを取り入れる動きが見られ、種類の違う小学校(キリスト教系とイスラム系)での受け入れの模索についてオンラインインタビューを行った(協力者:Tatang Surtano准教授)。 日本の教育モデルに関してこれらの社会の軸であるイスラムの枠組みを用いて再文脈化がどのように行われているのかを予備的に考えた章を執筆したり(恒吉僚子&藤村宣之『国際的に見る教育のイノベーション:日本の学校の未来を俯瞰する』勁草書房、2023年)、同テーマで受け入れ教員として引き受けたJICAの課題別研修において、異なるイスラム諸国やマレーシア政府とJICAが行っている本テーマを軸とした枠組みの導入例を見ながら、本テーマについての考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては、2023年度に行ったことを土台にして、研究に関連したいくつかの領域が同時に進んでいる。1)マレーシアやインドネシアでのインタビュー調査(継続)、マレーシアでの国際シンポジウム(実施済)の成果をまとめる作業(シンポジウムで発表した内容はマレーシア国際イスラム大学の出版会で章として執筆して提出済)、2)Tokkatsuモデルのトランスファーと受容、再文脈化を軸とし、日本の教育者と諸外国の教育者の相互協力体制を作りながら、実践的研究を推進する。Tokkatsuモデルより先に国際化した日本発の教育モデルにレッスン・スタディがあるが、その世界学会(World Association of Lesson Studies、WALS)に一昨年はマレーシアでTokkatsuモデルに関して基調講演(本科学研究費代表者)、シンポジウムと教育者によるワークショップを日本特別活動学会が協力する形で実施した。2023年には日本特別活動学会の教員への報告研修会が行われ、日本特別活動学会に国際交流委員会が設置された。その委員会を基盤にして、2024年度も日本の教師や先方の教育者を入れた実践的研究が推進されるべく、カザフスタンの上記学会WALSで学会の国際委員会が協力する形で既にWALSに提案している。急激な円安に対応するため、2023年度の経費の多くを2024年に繰り越した。3)日本の全人的な枠組みからの教育モデル(Tokkatsuモデル)を自分の国でいかそうとするイスラム圏とそれ以外の国からの研修員を対象にしたJICA課題別研修(2023年開始で3年)において、どのような形で自国での現地化(再文脈化)が可能であるかの考察を、研修とフィードバックを行いながら継続考察の予定である。以上の理由により、上記評価となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
もともとの科学研究費の研究計画では2023年度はマレーシア国際イスラム大学で国際シンポジウムを行う際に筆者がマレーシアに行って情報収集するはずであったが、先方の日程がずれて筆者の学期中になり、結果として筆者はマレーシア国際イスラム大学での国際シンポジウムでの基調講演をオンラインで行い、オンラインで海外協力者のインタビューを行うと共に、現地調査は2024年度に延期した。日本側の関係者に行ったインタビューと共に調査分析を進めているが、その調査と分析は継続する。また、2024年度はさらに、イスラム的背景ではないが、イスラム諸国同様、全人的な人間形成の枠組みをもち(ロシア・モデル)、それゆえに、全人的な志向を持つ日本の教育モデルTokkatsuに関心を抱いていると思われる東欧諸国の一つとしてのカザフスタンでの再文脈化の過程を分析しながら、実践者・研究者を国境を越えて連携体制を作って実践的な研究協力体制を継続的に作れればと思っている。レッスン・スタディの2024年度の世界大会(WALS)が、全人的な枠組みを持つ点で日本と共通性があるとされるカザフスタンで開催され、そこに日本特別活動国際交流委員会(科研代表者は委員)の協力事業として日本の教育モデルTokkatsuの国際発信を位置付けて、実施予定である(日本の教育モデルTokkatsuシンポジウム、ワークショップとブース、現地教育関係者のインタビュー)。カザフスタンは遠方であり、円安による航空運賃の高騰によって高額であり、2024年度に現地調査をする形で2023年度はオンラインを活用して科研費を2024年度に使用可能な形にした。
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Causes of Carryover |
報告書にも書いたが、2024年度はカザフスタンの世界授業研究学会(WALS)でTokkatsuの国際発信と調査を日本特別活動学会と行う渡航費・調査費が必要である。また、2023年にマレーシアで国際イスラム大学で国際シンポジウム時に現地調査をするはずであったのが、先方の予定変更で国際シンポジウムがオンラインになったため、現地調査を2023年にすることができず、次年度に延期した。いずれにおいても、円安のため、渡航費も現地調査も高く、その費用を確保するために、2023年度はインタビューをオンライン化するなどをして、2024年度に経費を繰り越したため。
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Research Products
(10 results)