2023 Fiscal Year Research-status Report
Research and Developmen on SDGs Rating Scale in the curriculim of nursery teacher training
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23K02244
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Research Institution | Momoyama Gakuin University of Education |
Principal Investigator |
名須川 知子 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 教授 (50144621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小餅谷 哲男 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 教授 (00449638)
高木 悠哉 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 准教授 (40572350)
葉山 貴美子 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 教授 (70290244)
山本 弥栄子 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 准教授 (80450097)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | SDGs意識 / ESD保育者養成 / モデル・カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費の取り組みで明らかにしようとする第1の目的は、大学における作農体験を講義内に位置づけ、実践によるPDCAとともにESDを行うモデル・カリキュラムを開発することである。第2の目的は、大学講義でのESDにより向上すると考えられるSDGsに対する意識について、統計的に検証できる評価スケールを開発することである。初年次では、主として保育者養成課程の大学生のESDに対する意識を測定可能な尺度の同定を行った。 SDGsを推進する有能感は、Olson et al.(2020)の海外版尺度の邦訳版を作製した。SDGs意識については、Biasttei & Frate (2017)の邦訳版を作製した。子供に関するESDの重要性認知は、園のESDを評価する尺度(OMEP ESD Rating Scale)を改変して作成した。SDGsを推進する有能感は、SDGsを意図した演習科目前後で向上するかを検討した。SDGs意識及び子供に関するESDの重要性認知は、オンライン調査により、ESDで意識される資質・能力(自己解決能力・他者協働能力)、保育者効力感との関係について検討した。 結果として、SDGsを推進する有能感は演習型講義の参加前後で有意に向上した。SDGs意識と子供に関するESDの重要性認知は、それぞれESDで意識される資質・能力と正の相関が有意であり、また両尺度間にも正の相関が有意であった。さらに、両尺度とも保育者効力感と正の相関が有意であった。これら研究の結果、SDGsに対する意識を3つの尺度から多面的に捉えることが可能であると判断した。これまで、大学生のSDGsに対する意識の向上は、自由記述による分析や単項目の評価項目での数値データ比較がほとんどであったが、本研究からSDGs意識をより詳細かつ統計的に捉えることができるため、一定の意義が認められると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費1年目は、(1)保育者の資質・能力としてのSDGs評価スケールの作成、(2)SDGs作農授業に関する授業実践法の検証、の2つの研究を行うことを研究目標としていた。 (1)の達成のため、SDGsを推進する有能感、SDGs意識を測定可能であり、ある程度の妥当性が認められた海外の尺度の邦訳版を作成した。まずは、作農プロジェクト前後で尺度の変化が認められるかを同定する全段階として、すでに体系化されたSDGsを意図する講義科目で検討した。結果として、SDGs意識の向上が統計的に認められたことから、尺度の使用の妥当性が示された。 同様に(1)の達成のため、保育者本人のSDG意識と、園での子供たちに育むべきSDGs意識が同一でない可能性を考え、子供達に関するESDの重要性認知に関する尺度を開発し、その妥当性を検証した結果、相関研究であるが、一定の理論的妥当性を担保するデータを得ることができた。 (2)の達成のため、大学のプロジェクト演習型科目の中で、大学構内の農園で、トマト、キュウリの作付けから、日々の作物の管理、収穫までを実施するプロジェクト演習を試験的に実施した。収穫は、講義内で行い、収穫された作物は各学生が持ち帰り調理を行った。作付けから収穫までの一連の状況を各グループが成長記録として動画・写真撮影し、最終講義までにそれらを編集し成長記録レポートとして提出した。自由記述の分析から、保育者養成課程の学生は作農体験をポジティブに捉えており、作農からSDGsの重要性について理解を示す記述が得られた。また、将来保育者になるうえで、作物を育てることが子供たちにどのような影響をもたらすかについて、SDGsの視点から記述が見られた。 以上、初年次に予定した研究は達成されたが、尺度の妥当性について再検討の余地があるため、2年目の研究に追加する必要が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、2年目に作農を中心とした演習型講義によるSDGs意識を兼ね備えた保育者養成プログラムを作成し、その効果を検証することが目標であった。1年目の研究から、プログラム及びその前後に測定する尺度がある程度同定されたが、その妥当性の検討に関しては限定的であり、尺度が一般化可能であるかに疑義が生じる可能性が生じた。したがって、2年次では、以下3つの研究を行うことを目標とする。 第1に、SDGsを推進する有能感、SDGs意識、子供達に関するESDの重要性認知という3つの尺度の妥当性をさらに検討するオンライン調査を実施する。対象を、保育者養成課程の学生、現役保育者、一般大学生に拡大し、1か月の期間を開けて同様に実施することで、再検査信頼性を検討する。また、初年次の研究では、SDGs意識、および子供たちに関するESDの重要性認知が、直接的に保育者効力感に影響しない可能性が示されている。したがって、保育者のSDGs意識が、保育者として園で行うSDGsに対する有能感に影響することを仮定し、新たな尺度開発を実施する。 第2に、第1の研究で得られたSDGsに対する尺度を使用し、作農を中心とした演習型講義プログラムの効果を測定することを目指す。学生が実際の作農を講義内で行っていくためのプログラムについては、初年次の研究で同定できているため、それを踏襲する。また、同時に座学のプログラムを追加する。具体的には、作農からSDGsに関わる内容を学生が見つけ出し、それを探求し、最終的に将来の保育場面で作農に関わるSDGsを意識した保育について具体像がイメージ可能となるように導くプログラムである。これらの実施により、SDGs意識に向上が認めらえるかを統計的に示すとともに、自由記述の分析も併せて行うことで、プログラムのパッケージ化が可能であるかについて検証していく。
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Causes of Carryover |
2023年度に実施したアンケート調査の費用が予想よりも安価に抑えられため、2004年度に実施する調査に費用を繰り越すことにした。
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