2023 Fiscal Year Research-status Report
保育現場における臨床心理学的支援の検討 -多摩市の臨床現場の調査をもとに-
Project/Area Number |
23K02282
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
廣瀬 雄一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90929811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 優 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (40316914)
古田 雅明 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (80552546)
春日 文 大妻女子大学, 人間関係学部, 講師 (40781456)
沼田 真美 関西国際大学, 心理学部, 講師 (30859426)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | こども園 / 保育園 / 幼稚園 / 気になる子 / 発達障害 / 臨床心理学的支援 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5(2023)年度の研究の目的は「保育現場における心理支援のニーズを具体的に明らかにすること」であった。具体的には,当初の研究計画に基づき,東京都多摩市内のこども園,保育園,幼稚園を対象に,管理職(園長など)1名と所属の保育士1名を1組とし,計3園のスタッフ合わせて6名に対し1回ずつインタビュー調査を実施した。 調査:尋ねた内容は,発達的・情緒的あるいは生活習慣や集団適応などに関する困難等が疑われる「気になる子」,およびその保護者に関して,実際の保育のなかで印象に残っている具体的エピソードやこれまでの対応方法,またそれに関連した心理職の貢献可能性等について,であった。インタビューは研究対象者1名に対し,調査者2名(調査進行の1名と調査補助および記録の1名)によって実施し,インタビュー時間はひとりあたり46分~76分(平均63分)であった。 結果:テキストマイニングの手法を用いて分析した。得られたデータに対し,「気になる子」の保育や「気になる子」の保護者へのかかわりに関連する頻出語に対して,KH Coderによる分析を行った.階層的クラスター分析を実施した結果,各園所属の保育士3名のインタビューデータに対し8つのクラスター,管理職3名に対し7つのクラスターが抽出された。 考察:結果の分析から,各園においてはベテラン保育士らの保育経験に基づく工夫や,地域の諸機関との連携によって「気になる子」に関連する課題に対応している実情が読み取れた。またそこにおいては,発達障がい等に関連する専門的な心理アセスメントや,「気になる子」の保護者らに対する支援等,臨床心理学的な支援の貢献可能性が見出された。 上記研究成果は第87回日本心理学会神戸大会でポスター発表にて公表した。また同内容を論文化し,学術誌『人間生活文化研究』に投稿する作業が進行中であることを付記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5(2023)年度の研究計画として,交付申請書には上記研究結果を第87回日本心理学会神戸大会でポスター発表する旨明示しており,その計画通り研究が進行し発表にも至ったため。またその結果の論文化の作業,および後述のアクションリサーチの準備も順次進行しており,本研究課題は概ね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6(2024)年度は,前年度のインタビュー調査で得られた知見をふまえつつ,実際の保育の現場にて,保育者に対して心理支援プログラムを実施する計画である。これは,心理支援プログラムの前後でインタビューと質問紙調査を実施することを含んだアクションリサーチである。プログラムの内容は,「気になる子ども」に対する保育者の関わりについて臨床心理学的支援を予定している。具体的には,保育者が困難を抱えやすい「気になる子ども」への関わりについて,保育者と心理職が協働して有効的な関わり方を検討する。また,心理職は対象児の行動観察を行うとともに,保育者の関わりについて臨床心理学的観点からフィードバックする。また,保育者をエンパワメントすることを重視し,研究活動以降も実際的な継続可能性を念頭に置きながら,研究を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画と使用額が異なった理由としては、インタビュー協力者のうち、ご厚意により謝金受領を辞退した方がいたこと、および日本心理学会第87回大会参加にあたり、参加予定だった研究分担者が急な事情により現地参加できなかったため、旅費分の余剰が発生したことが挙げられる。 次年度使用計画としては、アクションリサーチに伴う謝金支出にあてることを予定している。もともと交付申請時点での助成希望金額と、実際に承認された交付金額に開きがあったことから、その差を埋める形で活用したいと考えている。 以上をふまえ年度当初より計画的な予算執行を行うことで、再度、次年度使用額が生じることは避けられると考えている。
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