2023 Fiscal Year Research-status Report
異分野融合ESDを創発できる教員養成プログラム開発―生物文化多様性を体験/理解する
Project/Area Number |
23K02360
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
倉田 薫子 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (20434186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高芝 麻子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (80712744)
河内 啓成 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (20912398)
松田 裕之 横浜国立大学, 総合学術高等研究院, 特任教員(教授) (70190478)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ESD / 生物文化多様性 / 課題解決型学習 / 異分野融合 / 里山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,時代や地域に対応した異分野融合型ESDを考案・実践できる教員を養成することを目標に,①里山での体験学習プログラムの考案と実践,②「誰一人取り残さない」ESDの実現にむけたプログラム構築,③教員養成プログラムの開発の3段階によって構成されている。初年度では,①と②について研究を実施した。 ①里山での体験学習プログラムの考案と実践:児童向けの体験学習プログラムとして,里山未来工房(小学4~6年生22名,全6回の講座)を実施した。この講座では,モノづくりや科学,文化の視点を融合させたさまざまなプログラムを通して,里山の暮らしと生物との関係を俯瞰した。また日本の伝統文化と生物とのつながりや季節感を体験する1回完結型講座も実施した。子どものころの自然体験が大人になってからの自然観にも大きな影響を与えていることは,研究実施者の先行研究によって明らかになっており,これらの体験型講座を通して,自然と触れ合ったり理解したりする機会を提供することに大きな意義があると考えられる。一方,中高生に対しては,生物多様性教育の教材開発や在来種保全に関わる探求活動を支援した。発達段階に応じて自らが主体となって関わることにより,より社会課題としての生物多様性保全への意識づけが可能になったと考えられる。 ②「誰一人取り残さない」ESDの実現にむけたプログラム構築:①で実践したプログラムについてまとめた書籍の出版準備を進めている(2025年3月刊行予定)。多くの分野の専門家が里山での人と自然の共生についての視点で書いた学術的背景を載せることで,知識と実践の往還による実施者自身の学びにつながる工夫をしている。また,少年院における環境教育についての試験的アプローチとして,年2回3施設において,在来種の保全と生物多様性に関する実践と講話を実施した。令和8年度を目標とする全国展開に向けて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の進捗については,おおむね良好である。2023年度に実施した体験型講座は計20講座(延べ24講座)にのぼり,対象は小学生から保護者まで多岐にわたるものであった。多くの実践を経て,対象年齢や評価の方法について検討を重ね,次年度これに基づいて内容を精査し,実施する予定である。また,講座のつながりを意識して,より日本の伝統と生物多様性のつながりを認識できるようなプログラムになるよう協議を続けている。 一方で,評価の方法については検討の余地があった。ひとつには,対象年齢に合った問いを準備する必要があり,本来の目的に合致した項目を尋ねることが難しかったことが挙げられる。またオープンなイベントでは,目的の年齢層よりもより低い年齢層の参加が多く,プログラム内容としても,評価としても,十分な成果が得られなかった。今後,このような点について改善していく。 研究の第2ステップでもある「「誰一人取り残さない」ESDの実現にむけたプログラム構築」については,予定よりも進捗がよく,2025年3月に「里山でつなぐESD考」の書籍化が決定した。これには,YNUリーディングレクチャーシリーズ(全学共通科目)「里山でつなぐESD考」をオムニバスで担当する教員17名が,それぞれの専門に立って里山のことを語っていくという知識編と,実際に大学生対象に実施したESDについて紹介するという内容で執筆いただいたものである。この書籍によって,次のステップである教員養成プログラムの開発につながると期待される。さらに,少年院の環境教育についても,研究協力者である法務省矯正局とアースウォッチとの協定が締結され,具体的な検討段階に入っている。次年度はプログラムについて検討を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①里山での体験学習プログラムの考案と実践: 2024年度は,引き続き体験型学習のプログラム開発と,効果測定・プログラムの見直しを行う。特に生物多様性と文化多様性の接点となりうる題材を洗い出し,各分野の専門家がより深く研究することで,人間と自然の共生について理解が深まる教材を製作することができる。具体的には日本の伝統文化に関連するお正月飾りや菰巻きなどを体験を通して理解し,文化が生まれた背景,文化を醸成する生物の多様性の理解に向かうようなしくみをつくる。これを用いて,これまでと同様,連続講座および1回完結型講座を実施し,効果を測定していく。 ②「誰一人取り残さない」ESDの実現にむけたプログラム構築: 2025年3月刊行予定の「里山でつなぐESD考(タイトル未定)」を使った教員養成プログラムを考案する。このプログラムではESD実施者の実践と理解の往還を目指しているため,試験的に参加者を集めて,実際に講義と体験を通して,このプログラムが参加者に与える効果について測定できるよう準備を進める。また少年院における環境教育プログラムについても,引き続き3施設における実践と講話を続けつつ,少年院で実施可能なプログラムを考案し,全国展開に向けて各施設の法務教官が利用できる教材の作成を実施していく。
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Causes of Carryover |
2023年度に使用した助成金に大幅な変更が生じたのは,各講座におけるアンケートについて解析を行うことができず,アンケート解析のための雇用を見送ったためである。現在までの進捗状況でも記述した通り,オープンなイベントの参加者は,統計的に処理が可能な回答を書くことができる年齢層より低く,内容の見直しが必要となった。また記述しやすいように表示した「例」に回答を引きずられる傾向が見られ,中立な回答を収集することが困難であった。 以上のことを踏まえ,2024年度の講座で使用するアンケートは恣意的にならないアンケートを作成し,教育学の専門家に確認を依頼することに予算を使用するつもりである。また当年度において雇用しなかったアンケート解析の人員の雇用を行う予定である。これによりアンケートをできるだけ早く論文化し,翌2025年度の講座の実施について検討を始めることを目標とする。 少年院における環境教育プログラムでは,全国の少年院や刑務所の視察を積極的に行い,現在行われている枠組みの中での特色ある教育内容を精査し,全国の環境教育の全体構成を考案する。そのための視察費用に充てる。また2025年度から展開するリカレント教育,社会人向けプログラムについても2024年度中に内容の精査を始める。
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