2023 Fiscal Year Research-status Report
身近な生物の意外な生態の観察により真正の探究を実現する教材の開発・実践・評価
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23K02389
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
今井 健介 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80447888)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 探究学習 / 表現型可塑性 / ナミアゲハ / 昆虫 / 理科教育 / 飼育学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナミアゲハ等チョウ目の幼虫は、様々な条件下で通常より多く脱皮(過剰脱皮)することが知られているが、その全容は未解明である。ナミアゲハの過剰脱皮は一般的・教科書的な知識に反する現象であり、児童生徒が飼育体験と知識の矛盾に気づき、主体的に探究する学習に活用可能であると期待される。 令和5年度は、ナミアゲハの過剰脱皮の生起条件(至近要因)全体を明らかにし、飼育学習の中で意図的に過剰脱皮させる方法を確立するため、3種の外的条件(短日日長、不適な餌、飢餓)の組み合わせを操作し、過剰脱皮の生起確率および幼虫の成長に及ぼす影響を調査した。 短日日長で飼育した処理区では、野外同様に越冬蛹への変態を引き起こしたが、過剰脱皮の生起確率には影響がなかった。3令以降を成葉で飼育した処理区、4令以降を成葉で飼育した処理区では、過剰脱皮が生起し、5令以降を成葉で飼育しても過剰脱皮は生起しなかった。また、一日の間飢餓条件に置いた個体は、過剰脱皮は生起しなかった。 蛹の体重は、同一処理内では過剰脱皮個体の方が重かった。これは、過剰脱皮個体の方が頭殻が大きく、成葉を効率的に摂食したためと考えられるが、各個体の頭殻の測定および摂食量の推定については、実験で得た試料の計測が終了していない。なお、短日日長処理および飢餓処理では体重が軽くなる傾向があった。これらのことから、飢餓ストレスや短日日長刺激よりも、葉の生長による餌質の低下の方が過剰脱皮を起こしやすいことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育業務の多忙のため、予定よりも試料の測定が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度得た試料の測定を進める。令和5年度と同様の実験を、成葉を好んで利用するクロアゲハを用いて実験し、結果を比較するために、実験系の開発を行う。研究結果を用いた探究学習教材を開発し、大学生を対象とた模擬授業を実施する。
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Causes of Carryover |
令和5年度移植を予定していたカンキツ低木が、調達できなかったため。本年度中の移植を行う。また、既有のカンキツ低木の成長が良く、十分な飼料を確保できたため、代替餌であるヘンルーダの栽培を見送ったため。令和5年度は必要に応じて栽培を行う。
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