2023 Fiscal Year Research-status Report
Research on ESD learning theory for value transformation through knowledge construction
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23K02483
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
河野 晋也 大分大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (10901564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 昭利 大分大学, 大学院教育学研究科, 教授 (30910369)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ESD(持続可能な開発のための教育) / 価値観変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ESD における価値観変容を促す学習理論を示し,それに基づいたESDの授業モデルを作成することである。 研究初年度は,①知識構築に伴う価値観の変容プロセスをESDの学習理論として検討するとともに,②調査で使用するESDの授業構想を行うことを計画していた。本研究の実績として大きく2点示す。 1点目は,学習理論の構想と授業実践の構想・実施である。価値観の変容は,深い概念変化に伴って変容するものと考えることができる。そこで,本研究においては,断片的知識論を援用し,概念変化による知識構築によって,学習者の価値観変容を促すことを目的としている。そこで,まずESD授業実践(小学校総合的な学習の時間における平和学習)の学習計画を構想し,協力校において4時間の授業実践(研究代表者がT1,当該学校の教員がT2)を行った。構想した学習理論と,実践の成果については,日本ESD学会第7回近畿地方研究会(2024.1.7奈良教育大学)において報告し,多くの助言・示唆を得た。それを加味した論文を執筆し,現在査読を受けているところである。 2点目に,潜在的価値観変容の調査である。上記のESD授業による価値観変容の成果を確かめることを目的として,潜在的な価値観変容評価するための授業実践・調査を,上記とは別の小学校において実施し,データ収集を行った。同様に4時間の授業実践を行い,実践前後に集団式潜在連想テストの実施を行った。現在本調査の分析を行っているところである。この調査は,次年度においても実施することを協力校と確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた計画では,初年度において①ESD学習理論の検討と,②ESDの学習計画の構想を実施することとしていた。このうち学習理論については,日本ESD学会第7回近畿地方研究会(2024.1.7)において,『知識構築による価値観変容を目指したESD学習理論』と題して口頭発表を行い,多くの示唆を得ることができた。②学習計画については,構想の上実際に授業実践を行い,現在その成果を論文にまとめて投稿中(査読中)である。以上のことより,当初の計画についてはおおむね順調に進展しているといえる。 また,当初の計画以上に進展している点として,2年目以降に実施予定であった「ESD授業実践の実施」「顕在的・潜在的な価値観変容に関するデータの収集」を行うことができた点が挙げられる。上述の学習計画をもとに,授業実践を行い,その実践前後にデータの収集を行った。現在分析を行っているところではある。実践に協力いただいている学校からは,次年度においても継続的に研究に協力いただくことについて承諾を得ており,次年度以降も研究の継続が可能な環境が整っている。 一方,計画を見直す必要が生じた点として,潜在的な価値観変容に関する調査について,アプリ版での実施ではなく,紙面で解答する方法に変更した。実践校の状況を踏まえ,学級担任と相談の上,変更を決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,概念変化に伴う価値観変容の学習理論について,集団式潜在連想テストによって,その成果を明らかにすることが必要である。上述の通り,協力校において授業実践と調査を行うことを予定している。 一方で,新たな研究課題も明らかになってきている。概念変化に伴う価値観変容の過程とは,学習者自身の意識下/無意識下にある知識を呼び出し,結びつけることによって新たな知識構築を行い,その呼び出された断片的な知識への信頼の優先度を向上させることによって学習者にとってゆるぎないものとなっていく,つまり価値観の変容に至るというプロセスである。これまではどのように知識を呼び出し,結びつけるのか,という点に焦点化して研究を行ってきた。しかし,研究を進める過程で,知識構築を促す様々な要因について検討していく必要があると考えている。特に,学習者の周囲にある環境(取り巻くひと・もの・こと)は,概念変化や価値観の変容に大きな影響を与えているため,価値観変容のプロセスを明確に示す上では,これらが学習者の価値観にどのように影響を与えているのかという点についても明らかにしていく必要がある。この点について研究を進めるに当たっては,当初の研究計画を発展的に変更し,小学校に限定することなく,たとえば環境整備に注力することが多い幼児教育や,実際に社会に働きかけ環境とのやり取りを頻繁に行うプロジェクト型の学習などを題材として行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,当該年度の調査が想定よりも少ない回数で実施できたことによる。調査回数そのものは想定通りであったが,調査実施校のご協力により,短期間で集中的に調査をさせていただく機会を得た。また,調査に必要だと考えていたアプリの開発が協力校との協議の上,不必要となったことも要因である。 次年度の使用計画として,調査データの管理・分析に使用する物品(PC等)購入の資金として活用するほか,「8.今後の研究の推進方策」において記載した研究計画の発展的変更のため,学会への参加費用,調査旅費等として活用させていただく。
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