2023 Fiscal Year Research-status Report
CBMを用いた幼児期の算数のつまずきの予測因の解明と支援の効果
Project/Area Number |
23K02617
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
干川 隆 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90221564)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 算数 / スクリーニング / カリキュラムに基づく尺度 / 幼児 / 評価 / 遊び |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,学習の進捗状況を把握しスクリーニングするための尺度としてのカリキュラムに基づく尺度(CBM)を用いて,幼稚園での幼児の学習の進捗状況を把握し,小学校で算数につまずくリスクのある幼児を早期に特定して学習のつまずきの予測因を解明し,小学校での学習のつまずきを予防することである。 評価で用いた早期算数能力テストのCBMは,それぞれ1分間に正答した数を得点とし,以下の6項目から成っていた。①口頭でのカウンティング(1から始めて検査者が止めというまで数を数える),②数の認識(用紙の0から20までの数字を検査者から尋ねられたときに正しい数字を言う),③失われた数(数直線上で消えた数を答える),④量の識別(2つの数字のうち大きい方を答える),⑤量の配列(提示されたドットの数を数える),⑥次の数(数字の次の数を数える)。 53人の幼稚園児(6歳児)にCBMを実施した結果を集計したところ,全体得点が正規分布し,平均から1標準偏差以下の幼児が8人,平均から2標準偏差以下の幼児が1名おり,CBMが将来算数につまずくリスクのある幼児を特定できる可能性を示した。 また,家庭環境調査として家庭での保護者の教育的な取り組みや,習い事の状況に関するアンケートを作成し,保護者に回答を依頼し集計した。アンケートの結果とCBMの得点との関連を調べたところ,そろばんを習っている幼児は習っていない幼児と比較してCBMの得点が高かったが,学習塾に通っているか否かはCBMの得点に影響しなかった。家庭での幼児の好きな遊びとCBMの得点との間にも有意な関係はみられなかった。 研究成果の一部は,「算数につまずきのある児童へのカリキュラムに基づく尺度(CBM)を用いた支援の効果」として熊本大学教育学部紀要に発表し,「学習のつまずきを軽減する!効果的な教材&対応アイデア」として明治図書出版から出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,早期算数能力テストのCBMを作成し実施し,早期に算数の学習につまずくリスクのある幼児を特定することと,幼児期の習い事による影響や好きな遊びによる影響を調べるために家庭環境調査票を作成し,保護者に回答を依頼し,家庭環境調査票の結果とCBMとの関連を分析した。 まず,①カウンティング,②数の認識,③失われた数,④量の識別,⑤量の配列,⑥次の数の6項目からなる早期算数能力テストCBMを作成した。それぞれの6項目について,1分間に正答した数を得点とした。53人の幼稚園児(6歳児)にCBMを実施した結果を集計したところ,全体得点が正規分布し,平均から1標準偏差以下の幼児が8人,平均から2標準偏差以下の幼児が1名おり,CBMが将来算数につまずくリスクのある幼児を特定できる可能性を示した。 また,家庭環境調査として家庭での保護者の教育的な取り組みや,習い事の状況に関するアンケートを作成し,保護者に回答を依頼し集計した。アンケートの結果とCBMの得点との関連を調べたところ,そろばんを習っている幼児は習っていない幼児と比較してCBMの得点が高かったが,学習塾に通っているか否かはCBMの得点に影響しなかった。家庭での幼児の好きな遊びとCBMの得点との間にも有意な関係はみられなかった。 家庭環境調査票の「子育てで大切にされていること」とCBMの得点との多変量解析を実施したところ,「生活のリズム」と「知育・学習」の項目が5%水準で有意であり,「生活リズム」と「知育・学習」を大切にしている場合に,早期算数能力テストの合計得点が高くなることが示された。 これらのことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,①対象児を小学校まで追跡し,学年末の教師による評価と標準学力検査の結果を調べることによって,幼児期の早期算数能力テストのCBMの結果が,小学校での算数の学習のつまずきの予測因となるかどうかについて検討することがある。次に,②2023年度と同様に幼稚園児(6歳児)を対象に,早期算数能力テストのCBMを実施し,将来算数につまずく可能性のある幼児を特定し,その幼児を対象に定期的に「かずあそび」を実施し,数字や数を身近に感じることで,将来の算数のつまずきを軽減できるかどうかを検討する。 ①については,2023年度は実態を把握するだけで特に介入を実施していなかったことから,早期算数能力テストのCBMの得点と比較することによって,CBMが将来の算数のつまずきを予測できるかどうかについて検討する。また,2024年度の介入の効果を検討する際に,2023年度の対象児の小学校での学習の進捗状況が一つの比較基準となる。②について,早期算数能力テストの下位検査の得点を分析することにより,有効な「かずあそび」について検討を行う。「かずあそび」は,幼児が楽しみながら活動に参加するために,すごろくや勝ち負けなどのゲーム的な要素を取り入れた遊びを行う予定である。 その成果については,2025年度の小学校での担任による評価と標準学力検査の成績を2024年度の対象児の成績と比較することによって,「かずあそび」としての介入による効果を実証できるであろう。
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Causes of Carryover |
早期算数能力テストのCBMを実施するためにタブレットを購入したが,当初計画したものよりも同じ機能のものが安く購入することができた。また,結果の集計や分析に研究補助員を雇用する予定であったが,予定していたよりも短時間で処理することができ,その部分の予算を繰り越した形となった。 次年度,パソコンを購入する予定であるが,今年度の予算を繰り越すことによって,より上位の機種に変更することができるであろう。
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