2023 Fiscal Year Research-status Report
A Basic Study for Teaching Face-to-Face Explanation Based on the Audience Awareness Scale
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23K02662
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
辻 義人 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80400076)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 口頭説明 / コミュニケーション / Audience Awareness / ICT教育 / モノローグ説明 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、口頭説明活動のわかりやすさに注目し、わかりやすい口頭説明活動の指導に関する指針を得ることである。口頭説明活動のわかりやすさに関して、辻(2022)は「口頭説明受け手意識尺度」の提案と妥当性の検証を行っている。本尺度の構成概念として、「わかりやすさ志向因子」と「説明調整因子」が挙げられる。前者は、口頭説明に際して、事前に適切な説明内容と表現の準備を行う意識を示す。後者は、説明者と聞き手との相互対話をとおして、より適切な説明内容と表現を検討し修正する意識を示す。これまで、本尺度の構成概念について、十分な妥当性が得られていない。このことから、本尺度の構成概念について再検討を行う。 今年度は、口頭説明受け手意識尺度の構成概念に関して、各因子に関する検討を実施した。第一に、わかりやすさ志向因子に関する検討である。ここでは、モノローグ説明(説明者によるビデオ説明)に注目し、口頭説明受け手意識尺度の高低間において、聞き手の印象に関する比較を実施した。その結果、口頭説明受け手意識尺度の高低間において、わかりやすさ評定値に差は認められなかった。しかし、説明者のコミュニケーション能力に注目したところ、コミュニケーション尺度低群において、口頭説明のわかりやすさが高い結果が得られた。口頭説明の受け手意識とコミュニケーション能力について、注目する必要が示された。第二に、説明調整因子の検討を実施した。対面条件とオンライン条件のわかりやすさを比較した結果、説明調整因子の高低間に差は認められなかった。ただし、用語の統一、相互の理解状況の確認により、想定外の理解が生じる頻度が低下する結果が得られた。 なお、今年度の研究実績については、それぞれ学会発表を実施する(学会発表申請済)。また、得られた成果を原著論文として、学会誌に投稿する(学会誌投稿済)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、口頭説明受け手意識尺度の提案(検討1)、同尺度の妥当性の検証(検討2)、口頭説明技能の指導に向けた指導方針の検討(検討3)によって構成される。 現時点における進捗状況について、「(2)おおむね順調に進展している」といえる。その理由として、「口頭説明受け手意識尺度の提案(検討1)」について、新たな知見が得られたことが挙げられる。これまで、本尺度の構成概念について提案され、妥当性の検証がなされてきたが、十分な根拠はみられていない。このことから、本尺度の構成概念の下位構造に注目し、検討を行ってきた。本尺度の構成概念について、わかりやすさ志向因子(口頭説明に向けた聞き手の理解や状況に関する意識)と、説明調整因子(口頭説明をとおした説明内容と表現の修正意識)の二因子構造であることが示されている。ここで、わかりやすさ志向因子について、説明者と聞き手との対話が制限されたモノローグ説明場面の検討の結果より、コミュニケーション能力が高い説明者は、聞き手にとってわかりにくい口頭説明を行っている結果が得られた。この結果より、口頭説明の事前準備に際して、コミュニケーション能力に注目する必要があることが示された。次に、説明調整因子について、対面説明条件とオンライン説明条件を設定し、口頭説明のわかりやすさの検討を実施した。その結果、口頭説明受け手意識尺度の高低間において、わかりやすさに差は認められなかった。その一方、共通基盤の構築(説明者と聞き手の用語の統一、聞き手の理解状況の明確化)により、説明者による想定に沿った口頭説明が可能であることが示された。これらの結果をとおして、口頭説明受け手意識尺度の検討に際して、コミュニケーション能力、共通基盤構築に関する意識、これらに注目する必要性が示されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、「口頭説明受け手意識尺度の構成概念の提案(検討1)」の着手が挙げられる。これまでの検討結果においては、口頭説明受け手意識尺度について、十分な妥当性が得られていない。ここで、同尺度の下位概念について、「わかりやすさ志向因子」と「説明調整因子」に注目し、より適切な質問項目の追加を行う。具体的には、「わかりやすさ志向因子」に関して、説明者のコミュニケーション能力に関する質問項目の追加を行う。これにより、口頭説明に向けた事前の説明準備(説明内容・表現の選択)について、コミュニケーション能力との関連に注目した検討が可能となる。次に、「説明調整因子」に関して、説明者と聞き手との共通基盤構築に関する質問項目の追加を行う。共通基盤の構築に関して、説明者と聞き手との用語の統一、また、聞き手の理解状況に関する説明者との相互理解、これらに関する項目を追加する。これにより、説明活動の調整に際して、説明者が注意すべき観点に関する知見が得られることが期待される。これらの質問項目を追加したうえで、200名程度を対象に、本尺度の構成概念に関する質問紙調査を実施する。 次に、質問紙調査から得られた結果にもとづき、検討2(妥当性の検証)を実施する。このとき、対面説明条件と、オンライン説明条件を実施し、各条件におけるわかりやすい口頭説明のあり方について、数量的比較を実施する。この方法については、令和5年度に実施した口頭説明実験(対面条件・オンライン条件)で用いた実験の枠組みを利用することが可能である。 このように、今年度においては、口頭説明受け手意識尺度の構成概念の検討(検討1)、また、構成概念の妥当性の検証(検討2)、これらに関する取り組みを行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、口頭説明受け手意識尺度に関する検討(検討1)に関して、当初の予定と異なる調査研究を実施したことが挙げられる。当初の予定では、口頭説明受け手意識尺度の構成概念に注目し、修正した尺度について、200名程度を対象とした質問紙調査を行うこととなっていた。しかしながら、本尺度の構成概念について検証を行うため、質問紙調査に向けた調査研究を実施した。そのため、当初の予定では、200名程度を対象とした、一定のデータに関する収集と整理が必要であったのに対し、実際に得られたデータは、説明者と学習者との対話場面に関する録画記録であった。録画記録データの管理と整理に際しては、実験協力者に関する個人情報に加え、動作や発話が記録されているため、より厳重な管理が必要である。このため、データ整理に際しては、応募者自身が責任をもって実施した。今後、実際に質問紙調査を実施することから、データ整理に関する経費(人件費・謝金)が必要となることが予想される。今後、研究活動の進行に合わせ、厳密な経費管理を行う予定である。
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