2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K02760
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤井 純子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 助手 (50228946)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 地学教育 / 教材開発 / 礫 / 円磨度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,福井県の主な川の河床礫の形に注目し,運搬による変化を数値化する手法を開発するとともに,礫の形の変化と運搬距離との関係を明らかにすること,またこれらの結果を地域地質データベースの一部として充実させ,それらのウェブ教材や教育実践などの地学教育手法を開発することを目的としている。現在までに,いくつかの礫種の礫の円磨度や真円度等の変化,河床礫の試料採取方法の検討,転動による石の形の変化の観察・測定等を進めている。 これまでに進めてきた礫の画像解析を利用した円磨度・真円度・扁平度の変化等は,給源の範囲を特定できる足羽川の美濃帯中・古生層中のチャート礫および偽礫を含む頁岩についてまとめることができた。さらに,その他の礫についても調査・測定を進めている。また,県外の他地域においても給源が特定できる岩石種の礫の形の変化,火砕流堆積物中の軽石と海岸に打ち上げられた軽石礫の形の比較などを進めている。 円磨度測定によく利用されるKrumbeins(1941)の円磨度印象図は児童・生徒でも簡単に判別・区分できる優れた方法である一方,円磨度の計算値との差があること,測定者による個人差があることなど,その妥当性等の問題点も指摘されている。そこで,円磨度印象図中の礫の円磨度と計算値との比較検討,複数の測定者による値の比較,計算値と矛盾の少ない円磨度決定基準の検討等を,中高生や大学生を対象とした実践を活かしながら行ってきた。 また,超角礫がどのくらいの回転数(回転時間)を経て,どのように摩耗または破砕されていくのかについて,試料の大きさ,形,方法など様々な検討を行った。連続して礫の形や表面構造の変化等を追うことにより,よりよい円磨度決定基準の検討などを行うための有益なデータを得ることができており,今後も継続して実験する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,運搬距離との関係が比較的わかりやすい,給源の範囲を特定できる礫に着目して調査を進めてきた。足羽川上流に分布する美濃帯中・古生層のチャート礫と偽礫を含む砂岩はこの条件を満たしており,画像解析を利用した礫の円磨度・真円度・扁平度の変化等を調査した。また,試料の採取方法についても検討した。これらについては,第一段階の報告としてまとめることができた。さらに,県内外を含め,給源の範囲を特定できる礫が採取できる他の地域,河川なども対象に,調査・測定を進めている。 Krumbeins(1941)の円磨度印象図を用いた円磨度測定については,印象図内の礫の円磨度を計算により求め,その計算値と印象図内の円磨度の値の差について,画像解析による真円度等も用いて検討した。また,測定値の個人差の調査や解析等も行った。個人差の要因の一つに凸部と表面構造との区別が挙げられる。礫の最大内接円や凸部の内接円を測定し計算により求めた円磨度の値は,凸部の数に大きく影響される。凸部と表面構造とを区別する際に数値による基準を設けて,より平均化できる手法の提案も報告されてはいるが,どれも万全とは言い難い。印象図の改良,判断の基準の明確化と基準の共有等の検討を行い,中高生や大学生を対象とした実践を通じてよりよい測定方法を探っている。 さらに,超角礫がどのくらいの回転数(回転時間)を経て,どのように摩耗または破砕されていくのかについても,試料の大きさ,形,方法など様々な検討を行っている。ドラムの回転数と運搬距離の換算は簡単ではないものの,連続して礫の形や表面構造の変化等を追うことにより,よりよい円磨度決定のための基準の検討に有益なデータが得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
足羽川上流に分布する美濃帯中・古生層のチャート礫と偽礫を含む砂岩は「運搬距離との関係が比較的わかりやすい給源の範囲を特定できる礫」という条件を満たしており,画像解析を利用した礫の円磨度・真円度・扁平度の変化等を調査し,報告した。また,試料の採取方法についても検討した。さらに,県内外を含め,給源の範囲を特定できる礫が採取できる他の地域,河川なども対象に,調査・測定を進めている。今後は,九頭竜川上流に分布する閃緑岩,県外の河川において給源が特定できる岩石種の礫の形の変化の調査,火砕流堆積物中の軽石と海岸に打ち上げられた軽石礫の形の比較などを予定している。 Krumbeins(1941)の円磨度印象図を用いた円磨度測定については,印象図内の礫の円磨度の計算値と印象図内の円磨度の値の差,画像解析による真円度や扁平度,測定者による個人差等について検討してきた。印象図の改良,判断の基準の明確化と基準の共有等を提案し,実践を通じて,よりよい測定方法を今後も探っていきたい。 さらに,ドラムを用いた礫の形の変化について,試料の大きさ,形,方法など様々な検討を行っている。礫の角の変化,礫表面の様子や重量の変化等,興味深いデータが得られているが,自然界の長い時間を実験室で再現するには時間が掛かるため,今後も継続して実験する予定である。ドラムの回転数と運搬距離の換算についても検討するとともに,よりよい円磨度決定のための基準の検討に繋げていきたい。
|
Causes of Carryover |
作業の効率化を図るためノートPCの更新を行う予定であったが,内蔵SSDを取り付けることにより作業スピードが上がったため,ノートPCの更新を翌年度以降に再検討することにした。これによって差異が生じた金額については,県外の条件の合う河川礫などについて調査・試料採取するための旅費に充てた。細かいズレによる356円については,研究に必要な消耗品の一部として使用する予定である。
|