2023 Fiscal Year Research-status Report
英語での科学思考タスクと言語学習支援を軸とした大学理系基礎科目の教材開発
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23K02810
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
安村 友紀 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20733893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 夏実 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80350594)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 科学教育 / CLIL / 内容言語統合型学習 / 科学英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語で理科教育を受けてきた大学生を対象に、CLIL(内容言語統合型学習)を活用し、英語で科学的内容を即時に理解し議論できる能力を醸成する教材作成と指導法開発を目指す。本研究では、理系担当教員と言語学習担当の教員が協働し、科学英語の特徴的な表現形式を構造的な観点から分析することで、効果的な言語学習支援を構築する。さらに、段階的に難易度を調整した科学思考タスクにおいて、英語で科学的内容を思考、発信する訓練を繰り返す。この科学思考タスクと学習支援をモジュール化し、最終的に英語による大学理系基礎科目指導のプロトタイプを構築する。 令和5年度は、CLIL形式授業のパイロットスタディとして「英語で学ぶ生物学」科目を10月期に開講し、15回の授業で神経系や内分泌系などの異なる4つのトピックを扱い、事象の「なぜ」、「どのように」を問う問題やデータ分析等の科学的思考タスクを設計、実施した。同時に、英語による思考と議論を促すために、特定の英語表現を学習テーマとして設定した。履修生の活動や提出物を調査した結果、いくつかの英語表現の習得が、科学的内容を説明する際の英語表現の幅を広げ、より的確に科学的内容を説明するスキルを向上させることが観察された。この観察から、英語による学習の障壁となる科学英語の特徴を特定し、その障壁の克服に資する教材の作成を目指す素材を得ることができる。また、言語学習支援の効果について、学習支援の活用度と学習者のパフォーマンスへの影響を評価し、学習支援のタイミングや回数について考察を深めることができた。 本年度の研究進捗については日本CLIL教育学会第6回大会(2023年10月7日)において研究発表を行い、また、大学教育学会第46回大会(2024年6月8-9日)でも報告する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、「英語で学ぶ生物学」科目においてCLIL(内容言語統合型学習)形式授業を設計し、開講した。段階的に難易度を調整した科学思考タスクと言語学習支援を軸とした教材を作成し、履修生のタスクにおけるパフォーマンスと達成度を分析するといった活動を支障なく進めることができた。また、分析資料の収集とその方法については、授業実施時の試行錯誤を経て、iPadの画面収録機能や共同編集機能等を活用する手法を確立し、必要なデータを収集することができた。授業で用いた各種の教材については研究責任者と分担者が綿密に協議と検討を重ねて作成し、履修生の反応をもとに改善していく土台として有益なものができた。履修者の到達目標における達成度を測るためのルーブリックの作成については、令和5年度中の完成には至らなかったが、ルーブリック作成に必要な素材や方向性については考察を進めることができており、今後、文献調査を慎重に進めて近々に作成に至る見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、令和5年度に得られた知見を基に、「英語で学ぶ生物学」の教材の改善を行う。具体的には、習得が効果的と特定された英語表現の実践機会を増やし、より効果的な指導を実現するためにコンテンツとして扱う生物学の内容を精査、調整する。また、履修生の達成度やパフォーマンスを評価する手法についても、ルーブリックの作成と、それに基づいた評価とフィードバックの方法やタイミングを検討し、実施する。さらに、他の理系基礎分野でのCLIL形式の授業を設計するため、物理学と音声科学の分野においても英語による授業を開講する。「英語で学ぶ物理学」では、生物学で得られた知見や教材を応用できることが見込まれ、物理学のコンテンツに適応した教材の作成に着手する。「英語で学ぶ音声科学」においては、CLIL形式の授業の幅を広げるため、生物学では用いなかった言語学習の手法を用いて授業を実施し、その効果や有用性を確認することを計画する。上記の活動を通して、本年度は、それぞれの科目に適した到達目標、その到達目標に対応したタスクと学習支援の方法、評価の方法について検証し改善を図る。また、科学教育やCLIL分野での学会活動を行い、先行研究や先行事例の調査を進めるとともに、本研究活動に関する成果報告を行っていく。
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Causes of Carryover |
CLIL手法を用いて英語で科学教育を行う授業は、一般的には英語を授業の使用言語としていない国々で導入されており、例えばスペインや台湾などの、一部のヨーロッパやアジアの国々で実践が進んでいる。その実践例を学ぶための国際学会の参加や国際教育連携のための現場視察などを計画したいと考える。しかし、昨今の円安のために海外渡航費が高騰している状況から、研究費の運用を工夫することが必要となり、R5年度の予算執行を計画的に制限することで次年度以降の海外出張の費用を確保することを試みた。R5年度の研究費は、履修生が授業で使用するiPadについて、授業で活用する機能や授業運用に支障がないことを確認したうえで1世代前のiPadを購入することで想定より支出を抑えることが可能となった。
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