2023 Fiscal Year Research-status Report
Empirical examination of the influence of the interdependent-self on meta-stereotype activation and perspective taking
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23K02845
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
品田 瑞穂 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70578757)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メタステレオタイプ / 集団間関係 / ステレオタイプ / 相互協調的自己観 / 集団間態度 / ステレオタイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
R5年度は,メタステレオタイプ(自身の所属する集団が,他の集団からどのようなステレオタイプを持たれているかに関する信念)に関する文献調査を行い,成人を対象とした予備調査を実施した。本研究では,メタステレオタイプを活性化する要因として相互協調的自己観に着目し、メタステレオタイプの活性化が視点取得を通して集団間の偏見や敵対的感情を助長するプロセスを明らかにしようとしている。そのため初年度には,まず相互協調的自己観およびメタステレオタイプに関する文献調査を行った。文献調査に基づき,相互協調的自己観を拡張した集団間に拡張した集団相互依存観を測定する尺度を作成し,尺度の信頼性・妥当性の検討を行った。予備調査では,本研究の理論モデルの主要な変数である相互協調的自己観,メタステレオタイプ,集団間態度(外集団に対する態度)の関連に関する基礎的な知見を得るため,これらの変数を含めて調査票を作成した。予備調査の結果,まず,作成した集団相互依存観尺度全体には一定の信頼性・妥当性が確認された。ただし,想定していた協調性の2つの領域(評価懸念と調和の重視)が抽出されず,尺度の検討に課題が残る結果となった。一方で,予測と一貫して,1)相互協調的自己観はネガティブなメタステレオタイプと関連していること,2)集団相互依存観はネガティブなメタステレオタイプと関連している一方で,外集団への好意的態度にも関連することも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の調査により,相互協調的自己観,集団相互依存観,メタステレオタイプ,集団間態度の間の基礎的な関係についての知見が得られた。ただし,上述のように集団相互依存観尺度の因子構造には課題が残っており,尺度の再検討が必要である。予備調査において得られた知見のうち,相互協調的自己観とメタステレオタイプの関連に関しては,相互協調的自己観がネガティブなメタステレオタイプを活性化させるという本研究の理論モデルと一貫する。また,ネガティブなメタステレオタイプとポジティブなメタステレオタイプは,外集団への好意的態度に影響力を持っていたことから,相互協調的自己観-メタステレオタイプ―集団間態度という経路が示唆される。また,集団相互依存観,つまり集団間の関係を良好に保とうとする信念が強い場合,ネガティブなメタステレオタイプを持たれていると感じていると,その悪印象を覆そうと外集団に好意的になると解釈できる。この結果はメタステレオタイプと集団間態度に関する先行研究とも一貫している。ただし,先行研究と異なり,予備調査では「集団間相互依存観がメタステレオタイプと外集団への態度関係を調整する」という関係(集団間相互依存観が強いと,メタステレオタイプと外集団への態度の結びつきが強くなる)はみられなかった。この違いは,予備調査ではメタステレオタイプを個人特性として測定したのに対し,先行研究では実験的に操作していること,外集団態度として抽象的な外集団成員に対する好意を尋ねたことなどが考えられる。次年度の本調査においてはこれらの点をふまえ,先行研究との関係が明確になるよう測定項目を設定する。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度は,プライミング課題によって自己観を操作し,メタステレオタイプと集団間態度に及ぼす影響を検討する実験室実験を実施する。R5年度の予備調査の結果から,相互協調的自己観の強さは,ポジティブなステレオタイプよりもネガティブなステレオタイプと強く関連することが示された。さらに相互協調的自己観の2領域のうち,評価懸念領域と,他者との親和・順応領域では,評価懸念領域の方がネガティブなメタステレオタイプと強く関連することも確認された。ただし,集団間態度と関連していたのは集団相互依存観のみであり,相互協調的自己観は直接の関連を持たなかった。このことから,相互協調的自己観の操作は,メタステレオタイプを活性化させるものの,集団間態度には影響しない可能性も考えられる。このため,集団相互依存観の操作を含めた実験デザインを検討する。
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Causes of Carryover |
調査研究の実施にあたり,より信頼性のあるデータを得るため,調査会社への委託ではなく,クラウドソーシングを用いて自身で研究協力者を募集し,オンライン会議システムを用い,その場で回答を求める方法に変更した。このため,当初計画(委託調査)より調査にかかる費用が減少した。ただし,募集できた研究協力者数が計画よりも少なかったため,次年度に追加の調査を行うよう計画を修正した。また,資料収集のため参加を計画していた学会の一部がオンライン開催であったため,次年度に繰り越すこととした。
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