2023 Fiscal Year Research-status Report
The Origin of Supervision in Japan: An Approach from the History of Psychoanalysis
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23K02960
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西 見奈子 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (10435365)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 精神分析史 / スーパーヴィジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国のスーパーヴィジョンの成り立ちと現代までの影響を明らかにするために、日本で最初のスーパーヴィジョンの報告とされる小此木啓吾の「監督教育 Supervision としての統制分析 Control-analysis の一症例の報告」(1954-1955)とされる一連の論文について関連資料を収集し、分析、検討した。これは、小此木啓吾が古澤平作にスーパーヴィジョンを受けた全7回の詳細な記録である。研究結果の一部については、「日本の精神分析におけるスーパーヴィジョンの成り立ち」(2024)(第3回精神分析史と人文科学シンポジウム)において発表した。 上記の小此木による報告だけではなく、臨床心理学全体における草創期のスーパーヴィジョンの全体像を掴むために1960年代と1970年代における精神分析以外のスーパーヴィジョンに関連した文献を検討し、日本のスーパーヴィジョンの概観を示した。この研究結果については、『心理臨床に生きるスーパーヴィジョン:その発展と実践」(2024、日本評論社、高橋靖恵・西見奈子編)に一部を収録した。また、この編集本においては多様な心理臨床におけるスーパーヴィジョンに応えるものとして編集をおこない、現代におけるスーパーヴィジョンのあり方を検討することに繋がった。 また、古澤にスーパーヴィジョンを受けた一人である西園昌久の業績について「学問は永遠の事業 : 口愛期退行論をめぐる小考」としてまとめ、発表した。 さらに日本文化における精神分析を検討するために、ベルギーの精神分析学会の元会長であり、精神分析家のルディ・ベルモートを招いて「無心」をテーマに国際シンポジウムをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、小此木啓吾の「監督教育 Supervision としての統制分析 Control-analysis の一症例の報告」(1954-1955)をもとに研究をおこない、発表をおこなうことができた。古澤のスーパーヴァイジーに対するインタビューも予定通り計画していたが、対象者が調査の数日前に体調不良となり、そのまま逝去された。そうした不測の事態もあったが、古澤のスーパーヴァイジーである西園昌久について、スーパーヴィジョンについての編集本の出版、日本の精神分析をテーマにした国際シンポジウムの開催などは、研究経過の中で見出された知見に基づきおこなわれ、予想以上の多くの収穫をもたらしたものであり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
古澤平作側の背景に関連する資料に加えて、小此木啓吾側の背景についての調査をおこなう。その中で、特に次世代への影響、さらに日本のスーパーヴィジョンの特徴につながるものを抽出していくこととしたい。研究成果については、関連学会や研究会発表、投稿をおこなうこととする。 さらにこれまでの研究成果においては、精神分析だけではなく、臨床心理学全体の草創期のスーパーヴィジョンまで視野を広げることによって、草創期には司法関係の臨床において積極的にスーパーヴィジョンの活用が見られたことが確認された。草創期における臨床心理学と精神分析の関係性についても、我が国におけるスーパーヴィジョンの成り立ちにおける重要な背景と考えられるため、その点も注視しながら進めていきたい。
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Causes of Carryover |
インタビューを予定していたが、対象者の死去により中止となったため。次年度に新たな対象者を見つけ、実施を考えている。
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