2023 Fiscal Year Research-status Report
ポジティブ心理学介入による主体的で継続的な防災行動の促進
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23K02983
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
豊沢 純子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (90510024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島井 哲志 関西福祉科学大学, 心理科学部, 教授 (30136973)
竹橋 洋毅 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (70583871)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | Awe / 防災教育 / ポジティブ心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である今年度は、Awe(畏敬、畏怖)研究を日本の防災研究に導入するための基盤づくりを行った。 初めに、欧米を中心に行われてきたAweの操作が、日本でも有効であるかを確認するため、日本で行われたAwe研究のレビューを行った。その結果、Aweの操作と測定を行うための日本語版の尺度が見つかったため、作成者の許諾を得て、その尺度を以後の研究で使用することにした。 次に、日本の防災の枠組みでAweを操作するための素材を収集した。具体的には,国内の地学専門の博物館である地質標本館で地球のメカニズム(プレート模型や岩石の標本など)に関する展示の情報収集,および地質遺産を保存しているジオパークを1か所訪問して情報収集を行い,教材の素材を準備した。身近な環境においても、自然画像を収集し、四季の変化や植物の規則性などからAweを操作できる可能性を検討した。 さらに、収集した情報や画像を基に、Aweを操作するための教材を作成した。この教材を用いて、Aweの操作による防災教育の効果を検討した。具体的には、日本の国内および宇宙から見た日本についての自然画像を提示し、説明を行うことで、学習の前後で防災行動意図に変化が生じるかを検討した。また、本研究の対象者(大学生)がどのような刺激に対してAweを感じるのかを探索的に検討するため、参加者が素敵だと感じた自然画像を撮影して共有する実践も行った。防災教育効果を検討した研究の成果は、来年度の学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本におけるAwe研究のレビューを行い、今後の研究で使用する日本語版の尺度を選定することができた。また、当初予定していた博物館やジオパークを訪問し、Aweを操作するための情報収集を行うことができた。教材を試作し、2年目に実施する予定であった防災教育も前倒しで試行的に実施できた。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えられる。上記の研究を進めるにあたり、共同研究者との研究ミーティングも順調に実施できている。 しかし、情報収集に関して、当初はジオパークを複数訪問する予定であったが、1か所しか訪問できなかった。また、Aweの操作の検討が中心になったため、人生の意味(MIL)の研究をどのように位置づけるかについては検討ができなかった。 このように、研究全体としては順調に進展しているものの、いくつかの課題が残されていることから、現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、作成した教材を用いて防災教育を実施し、その効果を検証することを繰り返す予定である。初年度においても試行的に防災教育の効果を検討したが、教育効果は確認できなかった。従って、更なる教材の工夫が必要である。 初年度の研究を通して、当初の予定よりも教材作りに時間を要することが明らかになった。具体的には、Aweを喚起するための素材は自然画像だけでなく、防災における共助など人の営みに関するものも効果がある可能性があるため、防災教育においてどの素材を選定するのが良いか、丁寧に検証する必要がある。またSNSなどにおいて日常的に様々な画像に触れ、その効用を共有することに慣れている世代の対象者(大学生)にとってAweを感じやすい素材とはどのようなものかを検討することも必要であると思われる。 さらに博物館やジオパークの訪問から、地学の要素をAweと関連付けることも可能であると感じた。以上の点に基づき、共同研究者と連携を取りながら、以後の研究を推進していく。研究成果は都度、学会や学術誌で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は研究成果の発表ができなかったため、次年度以降に使用予定である。またジオサイトの訪問が1か所しか行けなかったため、次年度以降に訪問予定である。 自然画像収集のための機材も揃っていないため、次年度に不足分を購入予定である。
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