2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K03038
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
千田 雅隆 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (00451518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三枝 洋一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (70526962)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | p進Gross-Zagier公式 / 数論的対角サイクル / p進微分作用素 / Coleman積分 / 保型L関数の特殊値 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に次の三つの研究を行なった:(1) ユニタリ群上の保型形式に対するp進Gross-Zagier公式に関する研究,(2) Beilinson-Flach元の整モデルへの拡張の研究,(3) 保型L関数の二次捻りの中心値の非消滅に関する研究 (1)に関してはU(2,1)×U(1,1)上の保型形式の場合のp進L関数の構成が現在Harris-Hsieh-山名らにより研究が行われており,彼らが構成しようとしているp進L関数の特殊値と志村多様体上の数論的対角サイクルのp進Abel-Jacobi写像の下での像との関係を調べることを目標としている.その鍵となるのが(Besserによる)高次元の場合のColeman積分に関する明示的な計算であり,そのためにはSerreのp進微分作用素の理論の高次元化が必要となる.これについて,台湾国立大学のMing-Lun Hsieh氏と大阪公立大学の山名俊介氏と議論を行い,今後の問題点を明らかにすることができた. (2)に関してはENS de LyonのFrancois Brunault氏と共同で研究を行い,Conradによるモジュラー曲線上の久賀-佐藤多様体の整モデルの構成を用いてSchollによるモチビックコホモロジーに関する結果の一部の拡張を行なった. (3)に関しては昨年度に金沢大学の若槻聡氏と共同でいくつかの重さが4以上の保型形式に対して,素数判別式を持つ虚二次体による捻ったL関数の中心値が常に消えないということを示したが,今年度はこの結果を論文にまとめ,専門誌に投稿した.この結果はConrey-Keating-Rubinstein-SnaithによるL関数の中心値での零点に関する予想の例を与えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題において,特に重要と考えているp進Gross-Zagier公式の高次元化の研究については,問題点を整理することはできたものの,当初想定していたほどには進展させることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
高次元の場合のp進Gross-Zagier公式の研究として,Darmon-Rotgerは楕円保型形式の三重積の場合を考察している.彼らの結果は直交群SO(4)×S0(3)上の保型形式の場合として捉えることができ,同様の公式をユニタリ群の場合にも拡張するのが本研究課題の一つの大きな目標であるが,彼らの議論をユニタリ群の場合に拡張するためには様々な問題点が存在する.その後,BesserはDarmon-Rotgerによる証明を単純化することに成功しており,Besserによる手法をユニタリ群上の場合に拡張することで,これまで考えていた方針よりも議論が単純化できる可能性があることから,今後はBesserの方針に基づいて研究を行う予定である.この研究に関しては共同研究者であるMichael Harris氏,Ming-Lun Hsieh氏,山名俊介氏と直接議論を行うことでこの研究を推進していきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
今年度は予定されていた海外出張及び研究打ち合わせをキャンセルしなければならなくなったため次年度使用額が生じた.その分の使用額を来年度以降に海外出張及び研究打ち合わせのための費用として使用する予定である.
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