2023 Fiscal Year Research-status Report
Lace-expansion approach towards phase transitions, critical phenomena and constructive field theory
Project/Area Number |
23K03143
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂井 哲 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50506996)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 相転移 / 臨界現象 / レース展開 / 量子イジング模型 / ランダム媒質 / 構成的場の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は三つの課題から成り立っている. 課題(i)「量子摂動に対するIsing模型の相転移・臨界現象の安定性」では,R5年度に「離散時間レース展開の連続極限」を目指した.d次元量子Ising模型は,Lie-Trotter表現により,(d+1)次元時空間上の古典Ising模型として解釈できる.そこで,まず時間を離散化し,標準的なレース展開を用いたのち連続極限を取ってみたが,展開係数の交代級数が激しく振動し,全く制御できなかった.続いて「後戻り無し」のレース展開を用いて自明な振動を取り込まないように工夫をしたが,やはりO(1)で振動する交代級数になってしまう問題を解決できなかった.今後は時間軸を離散化せずに得られる「ランダムパリティ表現」を使ってレース展開の導出を試みる. 課題(ii)「定常なランダム媒質中の自己回避歩行の高次元臨界現象」では,共同研究者の千野由喜さん(台湾NYCU)が札幌を二度訪問した際と,シンガポールIMSで主催した3週間のプログラム(2023年12/4~12/22)期間中に意見交換をして,問題を共有した.また,新たにBruno Hideki Fukushima-Kimuraさん(ポスドク)が加わり,毎週議論を始めたところである. 課題(iii)「低次元格子φ4乗模型からOS公理系をみたす非自明な連続極限を構成」では,ランダムウォーク表示を用いたBrydges-Helmuth-Holmesレース展開により,質量のある連続極限を構成できる傍証が得られている.残るは,この極限がユークリッド不変性(とくに回転不変性)を持つことを示すのみなのだが,未解決である.どんな統計量を考えれば回転不変性を証明できるのか,今後模索していく計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R5年度は本申請者の所属大学で運営の仕事が特に重く,しかも本申請者が「主たる共同研究者」を務めたCRESTが最終年度を迎えていたこともあり,本研究に十分時間を割けなかったことが理由として挙げられる. また,共同研究者が海外にいるにも拘らず,未だに相互訪問がコロナ前の状態まで戻っていないことも理由の一つである. 技術的な理由としては,とくに課題(i)で当初予想していた方針(d次元量子Ising模型を(d+1)次元時空間上の古典Ising模型として解釈し,時間を離散化して,標準的なレース展開を用いたのち,連続時間極限を取る,というアプローチ)が上手く行かなかったことも大きい.今後は最初から連続時間表現である「ランダムパリティ表現」を用いてレース展開を導出する予定.
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Strategy for Future Research Activity |
課題(i)では,ランダムパリティ表現を用いたレース展開を導出することから始めたい.この表現を用いると,帯磁率などの重要な統計量に対する真面な微分不等式が得られる.「真面な」というのは,これを用いて高次元平均場臨界現象を証明できる(この結果自体も新しいので,将来的に論文に纏める予定)という意味である.ただし,レース展開のような恒等式で,展開係数の交代級数が絶対収束することを示すことができるかどうかは未知数. 課題(ii)では,R5年度末から活動が再開し,新メンバーのBruno Hideki Fukushima-Kimuiraさん(ポスドク)と定期的に打ち合せするようになった.この活動を継続していく予定. 課題(iii)は,共同研究者である河本野恵さんがR6年度から台湾NCTSのポスドクとして働くことになったため,毎週定期的に打合せをすると言うことが少し難しくなった.今後は,本申請者の研究室に所属する学生にも手伝ってもらうことを考えている.
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Causes of Carryover |
大きな理由が四つある.一つ目は,本申請者の所属大学で運営の仕事が重かったこと.二つ目は,R5年度がCRESTの最終年度であったため,そちらに注力せざるを得なかったこと.三つめは,R5年9月に予定していたカナダへの旅行が,先方の都合で中止になってしまったこと.そして最後は,R5年11月に予定していたRIMS研究集会が,共催者の長期出張で中止になってしまったこと. R6年度も,本申請者の所属大学で運営の仕事が引き続き重いため,R6年6~12月の間,学術研究員を雇用して研究補助をしてもらう予定.
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