2023 Fiscal Year Research-status Report
荷重付分数冪Sobolev空間の偏微分方程式と等周不等式への応用
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23K03171
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
齋藤 洋樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (20736631)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | Hausdorff容量 / Choquet空間 / 等周不等式 / Rieszポテンシャル / 分数冪Sobolev空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は荷重付分数冪Sobolev空間の性質を荷重付Hausdorff容量を用いて調べることにより,偏微分方程式と等周不等式へ応用することが目的である.令和5年度における研究により以下の2つの成果を得た. (1) 調和解析の研究において,関数fの特異積分を制御するために,2進立方体からfに応じて適切に選択して積分平均を制御するスパース作用素が重要な役割を果たす.本研究で用いられるRieszポテンシャルの研究にも強力に働くものであるが,近年海外の研究者によってHausdorff容量によるChoquet空間上で有界とならないことが反例とともに示された.そこで,本研究でスパース作用素がChoquet空間の関数をどのような空間に作用するのか精査したところ,Hausdorff容量によるOrlicz-Morrey空間と呼ぶべき空間で特徴付けられることがわかった.この結果はすでに論文として現在投稿中である. (2) Sobolevの埋込定理は様々な見方ができるが,そのひとつとして「関数のノルムを微分のノルムで評価する不等式」と考えられる.評価されるノルムのLebesgue測度を一般のRadon測度にしたものはトレース不等式と呼ばれる.Schrodinger方程式と関連するこの不等式は,Maz'yaによって微分の階数が一般化され,その特徴付けにはHausdorff容量が用いられる.本研究によって,右辺のノルム(評価する方のノルム)を分数冪Sobolevノルムとする不等式を得ることができた.これはPonce-Spectorが得た分数冪boxing不等式の帰結であるが,現在この研究をさらに推し進め,分数冪に一般化された等周不等式の特徴付け(Xiaoによる結果)をさらに拡張することを試みている.この拡張に成功し次第論文として投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の後半に予定していた等周不等式への応用について,[研究実績の概要]の(2)で述べたように,整数指数のトレース型不等式を分数冪指数に拡張できることがわかり,また等周不等式に関する新たな特徴付けを得られる可能性を見出せるなどの進展があった.反対に前半に計画していた荷重付分数冪Sobolev空間の精査は,荷重空間の定式化が得られたところで中断している.しかし研究計画全体で見れば順調に進展している. また投稿している論文は昨年の10月に投稿したものであり,査読に時間がかかっている.そのため,R5年度の成果で掲載が決定した論文はないものの,研究はおおむね順調に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に多少の前後があるが,大きな変更の必要はなく,当初の通り計画を進める. (1) 分数冪Sobolev空間へ付加する荷重の条件や方法は,自身の研究で得ている斉次Besov空間への荷重付加の方法と同様にできる.まずMuckenhoupt A_p型荷重の条件のもと,荷重付Sobolev空間W_{w}^{a,p}と荷重付斉次Besov空間B_{p,p}^{s,w}が同一視できることを示す.自身の先行研究において荷重付Besov空間への埋込を考察した際はreverse Holderクラスの荷重条件を仮定していたが,ここではその条件を除くことを検討する. (2) 次に,このSobolev空間を原料にして定義される容量を定義して,荷重付Hausdorff容量との関係を調べる.ここでは,Sobolev容量がn-ap次元のHausdorff容量と同値になることを予想している.この結果は非荷重の場合で確かめられているが,荷重がついた場合は(1)と同様Muckenhoupt A_pクラスの荷重条件を仮定する必要があると予想している. (3) 最後に,R6年度までの研究によって,Sobolev容量の定義における下限を実現する(attainする)関数の存在を変分法の手法によって示す.これは既存の方法と同様にできるものと考えられる.
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに使用できているが,円安の影響で予定していた外国の本の値段が高騰したため,購入を次年度に持ち越したものもあった.そのため出張の日数も調整する必要があり,残額が生じた. R6年度は海外での発表を予定しており,想定以上に予算が必要となる可能性がある.書籍の購入が予定通りできないことがあり得るが,その場合はタブレットの購入を見送り,洋書の購入を優先して予算執行を行う予定である.
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