2023 Fiscal Year Research-status Report
代数的不変量に着目した閉曲面上のオイラーグラフの良い辺向き付けに関する研究
Project/Area Number |
23K03196
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 有祐 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10390402)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 閉曲面 / 有向グラフ / オイラリアングラフ / サイクルパリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究課題の申請書提出後から共同研究者である横浜国立大学の中本氏と議論を重ね,当初の目標の1つであった「一般の閉曲面上の良い辺向き付けをもつオイラーグラフの特徴付け」に成功した.ここで,“良い辺向き付け”とは,任意の頂点vの周りで,vに向かう有向辺とvから出ていく有向辺が交互に表れるような辺向き付けのことを指す.球面上では,任意のオイラリアングラフが良い辺向き付けをもつことが知られていたが,上述の結果は当該分野において基礎的かつ重要なものでありながら,これまで結果が存在していない状況であった.当初の予想通り,閉曲面上の代数的不変量(偶角形分割のサイクルパリティと呼ばれる不変量)を用いて,そのような辺向き付けの有無をコントロールすることができた.その証明は,向き付け不可能な閉曲面の2重被覆をとることで向き付け可能な閉曲面を得て,その上で議論を行うことで得られている.(当初考えていたより簡潔な証明を得ることに成功している.)また同時に「いくらかの指定した頂点が交互性をもたないような辺向き付け」に関しても特徴づけを得ることに成功した.(閉曲面上に与えられたオイラリアングラフGと指定された頂点部分集合Sに対して,Sに属する頂点のみが交互性をもたないような辺向き付けをもつための特徴付けを行った.)さらに,その結果を利用し,閉曲面上に交差を許して描画したオイラーグラフの良い辺向き付けに関する特徴付けも行った.これらの結果を論文にまとめ,専門誌に投稿することができた.また,上述の結果を,6月にスロベニアで行われた国際会議10th Slovenian International Conference on Graph Theoryで発表し,海外の研究者からのレビューを受けた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記述した通り,本研究課題が採択される以前から準備を進め,予想以上に早く結果を出し,論文を専門誌に投稿することができた.その論文の主なテーマは申請書に記述した「一般の閉曲面上の良い辺向き付けをもつオイラーグラフの特徴付け」というものだが,同時に,これも申請書に記述した問題である「いくらかの指定した頂点が交互性をもたないような辺向き付けの研究」及び「閉曲面上に交差を許して描画されたオイラーグラフの良い辺向き付けに関する研究」の結果も含んでおり,現状では,当初の計画以上に研究が進展していると言えるだろう.主定理の証明自体も比較的簡潔に記述できているが,より良い証明方法が存在するかどうかに関して引き続き議論を重ねていく必要がある.(現在の証明は「向き付け不可能閉曲面の2重被覆」という位相幾何学の道具をベースにしたものになっているが,より組合せ的な議論に寄せることは可能か?) 上述の「いくらかの指定した頂点が交互性をもたないような辺向き付けの研究」に関する計算時間の問題はまだ着手できていないが,上記の論文採択を待ち,適切な時期に開始したいと考えている.手始めに平面上のグラフに限定し,指定する頂点の数が少ない場合の既存の結果を少し拡張することから,それを足掛かりに一般の場合の議論を行っていく.また「奇次数の頂点も許した閉曲面上のグラフの良い辺向き付けに関する研究」に関しても同様であるが,自身の研究室に所属する大学院生を議論に参加させるべく,既に論文の内容理解と近辺の情報収集を行わせている状況である.
|
Strategy for Future Research Activity |
投稿した論文の採択&出版を待ち,国内外の研究者の反応を確認する.また,国内外の研究集会等で引き続き結果の紹介を行って,近辺の問題との関連を他の研究者と議論する.11月に行われた国際研究集会(35th Workshop on Topological Graph Theory)において,Vanderbilt University(アメリカ)のMark Ellinghamの講演を聞いたが,我々の主定理と類似の結果を他の視点から紹介しており,その場で情報交換と議論を行った.引き続き,我々の結果と彼らの結果の相違点などを確認しつつ,我々の文脈での,新たな問題の創出につなげていく. 「いくらかの指定した頂点が交互性をもたないような辺向き付けの研究」に関する計算時間の問題に対しては,まずは既存の結果を少し拡張することに挑戦する.その後,適切な時期に理論計算機科学寄りの研究者に相談して,可能であれば共同研究を行いたいと考えている.現在,自身の研究室には,博士後期課程に在籍している学生が3名,博士前期課程(修士課程)に在籍している学生が6名いる.それぞれ,位相幾何学的グラフ理論に関する異なるテーマで研究を行わせているが,そのうちの数名は,本研究課題に関する勉強を行っている.物理的な距離の近い彼らを指導し,成長させ,共に研究を行うことで研究を加速させていきたいと考えている.また,引き続き,共同研究者である,横浜国立大学の中本氏と議論を重ね,新たな研究の方向性を模索していく.
|
Research Products
(3 results)