2023 Fiscal Year Research-status Report
微分幾何学的アプローチによる外力と障害物の存在下における最短経路探索
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23K03226
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
谷島 尚宏 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (00548141)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 最適制御 / 微分幾何学 / フィンスラー幾何学 / 変分法 / ヤコビ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
外力の存在下における移動体の経路探索として、本年度は曲率を用いた最短経路の分類を行った。2次元平面上を外力の影響を受けて移動する物体の時間最適経路について、変分原理とフィンスラー空間におけるヤコビ安定性解析に基づいて議論を行った。物体に加わる外力が1変数のみの関数で記述できる場合、物体の経路のヤコビ安定性を決定する偏差曲率テンソルは、経路を与える2階常微分方程式から求めることができる。このような場合、経路のヤコビ安定性は偏差曲率テンソルのトレースで表されることを示した。さらに、具体的に三角関数で記述される周期外力に対するヤコビ安定性と経路の種類との関係を調べた。この場合、周期的な外力は半径方向に伸びる経路と特定の方向に沿った経路を与えることが分かった。これらの経路を分類するため、それぞれの経路の種類について、偏差曲率テンソルの固有値の時間平均を求めた。その結果、経路の種類が変わると、これらの平均値に大きなピークが現れることが分かった。したがって、経路の種類が切り替わる境界においてヤコビ不安定性が非常に大きくなり、ヤコビ安定性解析は経路の種類の分類に関係することを示すことができた。 また、変分原理の他に等距離面を用いた最短経路の導出が知られている。この場合の経路は1階微分方程式と関係付けられる。そこで、等距離面から得られる経路と幾何学量の関係を調べる準備として、一般的な1階微分方程式に対するヤコビ安定性を調べた。その結果、ヤコビ安定領域は解が線形化できない非線形領域に現れることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外力の存在下における移動体の最短経路問題として、変分原理と微分幾何学に基づいた経路の分類を行った。平面上を移動する物体に作用する外力が1変数の関数として与えた場合について考え、フィンスラー空間のラグランジアンを用い最短経路を求めた。この場合について、経路を与える微分方程式にヤコビ安定性解析を用いて偏差曲率テンソルの解析的な表現を得ることができた。具体的な外力として周期外力に対する最短経路を求め、偏差曲率テンソルの固有値の時間平均によって経路の分類を行った。このとき、経路の種類が切り替わる初期角度に対する経路上ではヤコビ不安定性が大きくなることを示し、最短経路と幾何学量の関係性について明らかにした。 さらに、1階微分方程式に対してヤコビ安定性解析を適用する場合、偏差曲率テンソルの導出方法には2種類の導出方法があることを示し、それぞれのヤコビ安定領域が異なることを明らかにした。以上によりヤコビ安定性解析手法を最短経路問題に適用することができたため、外力に加え障害物などが存在する一般的な条件下において経路問題を幾何学的に議論することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
外力の存在する場合の経路問題について、等距離面を与えるアイコナル方程式から得られる最短経路について調べる。等距離面から得られるハミルトニアンを用い、カルタン空間における幾何学量を求める。前年度と同様に、外力が1変数の関数として与えられる場合について曲率を求め、経路との関係を明らかにする。さらに、外力の存在下における移動体の最短経路問題を障害物が存在する場合に一般化する。ガウス関数やシグモイド関数などによって壁や障害物を表現するためのポテンシャル関数を導入することで、室内空間における経路を与えるラグランジアンを求める。この場合、障害物への衝突角度によって規則的な経路と不規則な経路が現れると考えられる。そこで、経路の方程式から偏差曲率テンソルを求め、その固有値からヤコビ安定性を求め経路の分類を行う。
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Causes of Carryover |
予想よりも経費が抑えられたため、次年度に繰越を行った。消耗品費等に支出する予定である。
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