2023 Fiscal Year Research-status Report
一般化された2次元流体系における3個の点渦の合体現象に関する研究
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23K03253
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩山 隆寛 福岡大学, 理学部, 教授 (10284598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷島 尚宏 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (00548141)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 点渦 / 自己相似衝突 / 非自己相似衝突 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般化された2次元流体系の3個の点渦の衝突合体現象について,理論的・数値実験的研究を行った.初年度は,点渦が作る三角形が,形を変えず大きさが拡大もしくは縮小する軌道の線形安定性を研究した. 一般化された2次元流体系の点渦モデルには,実数パラメタ―αが含まれており,αの値により渦どうしの相互作用の仕方が変わる,流体力学で伝統的に研究されてきたEuler系はα=2に対応する.αの値が2以外の場合に,Euler系で知られている点渦の運動の様々な性質がどのように変化するのか,さらにそのメカニズムを明らかにすることで,点渦の運動をより深く理解することが本研究の目的である.Aref(2010)によって行われたEuler系の点渦の研究によると,自己相似衝突軌道は線形不安定であるが,拡大軌道は線形安定である. Aref(2010)の理論を参考にして,本研究課題の系の安定性を定式化した.安定性は,6×6の行列の固有値に依存する.この行列の固有値を数値的に求めたうえで,さらにEuler系における同様の行列に関する固有ベクトルから,本申請課題の系の行列の固有ベクトルを推測し,6個の固有値をすべて解析的に表現することができた.このことにより,一般化された2次元流体系の点渦の自己相似軌道の線形安定性を解析的に評価することが可能になった. 自己相似軌道は,系が満足しなければならない不変量の束縛条件の範囲内で,衝突軌道は線形不安定,拡大軌道は線形安定であり,系に含まれるパラメターαに依存しないことが分かった. 上記の他に,申請課題の2番目のテーマである,非自己相似衝突解の存在に関する研究にも着手した.この問題を解決するための手掛かりとなる論文を解読し,Euler系の3個の点渦において,非自己相似衝突が存在しないことの数学的証明を整理した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究費の申請時において,3つのテーマを挙げていた.1番目のテーマは,研究が完了し,論文を2023年中にJournal of Physical Society of Japanにおいて出版,公表している.2番目のテーマは初年度から着手することができ,解決の手掛かりについても得ることができた.以上のことから研究は順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究テーマは,一般化された2次元流体系の3個の点渦において,非自己相似衝突解の存在に関する数学的証明である.この系はパラメターαを含み,α=2の場合には,非自己相似衝突解は存在しないことが,Hernandez-Garduno and Lacomba(2007)によって証明されている.彼らの方法を参考に,αが2以外の場合を調べる計画である.彼らの手法を整理して,理解ができた状態であり,この手法を一般化された2次元流体系の3個の点渦に適用する準備は整っている.また,数学的な証明に加えて,具体的な場合を例示する必要がある場合,点渦の数値計算を高精度に行うための数値計算コードを3種類構築している.
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Causes of Carryover |
学会等で研究成果の公表,研究討論を行うことを計画し,そのための旅費を確保していた.しかし,教育活動等で出張ができず,余りが生じた.2年目の研究課題は,地球流体力学だけでなく,流体数理にも関係する分野横断な研究テーマであるため,積極的に学会,研究会等に出席して研究者と議論し,研究を進めていくため,また,研究成果を公表・宣伝するための旅費として使用する予定である.
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