2023 Fiscal Year Research-status Report
電気トロイダル単極子によるカイラル物質の特性解明と外場制御
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23K03288
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
楠瀬 博明 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00292201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
速水 賢 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20776546)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多極子基底 / スピン軌道相互作用 / カイラリティ / フォノン / 第一原理電子状態 / フロッケ理論 / 円偏光電磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体結晶中の多様な電子自由度を多極子の自由度を用いて整理することで、交差相関物性を系統的に理解する試みにおいて、電子系のハミルトニアンを多極子基底で展開する一般的手法を開発した。また、線形及び非線形応答において、その発現に必須のモデルパラメータを系統的に特定する手法を開発し、多極子基底で 表したハミルトニアンと併用して、各種物性応答の微視的起源を明らかにする一般的な処方箋を与えた。また、これらの基底を視覚的に表現する描画ツールを開発し、一般公開している。 以上の知見を基に、カイラル物質を量子論の観点から理解することを目標にして、以下のような成果を得た。カイラル系の典型物質Teに手法を適用し、カイラリティに関与するミクロな電子自由度を特定し、電場と格子回転のような極性と軸性を変換する新しい応答現象を見出した。カイラリティを量子論的に理解するための概要をまとめたレビュー論文を執筆した。カイラル物質に対する電磁場応答を、フロッケ理論を活用して解析し、円偏光電磁場とカイラリティの結合様式を明らかにした。また、カイラル結晶とカイラルフォノンとの結合に関して、格子模型を用いて解析し、エネルギー分散に関して一般的に成り立つ法則を明らかにした。そのほか、強軸性秩序と呼ばれる系に対する横型応答を利用したスピン流生成の提案、電場によるキラリティの誘起、また、ある種の反強磁性体は軸性のスカラー秩序とみなせて、この状態に静的な電場と磁場を印加することによりカイラリティが誘起できることなどを提案した。さらに、秩序変数が長年未解決のURu2Si2の秩序変数として交替型のカイラル電荷秩序というシナリオを提案し、可能な確認実験を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子状態を対称性の観点から扱うことのできる多極子完全基底の理論が完成し、具体的に計算を実行するためのソフトウェアの整備が進んだため、カイラリティに関する多くの疑問事項に対して具体的な模型計算を効率的に実行できた。 そのため、順調に研究課題が進み、順次論文出版を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
電子状態計算と多極子基底分解の手法を用いて、系統的な実験が行われているダイシリサイド系の電子状態を電気トロイダル単極子に着目して分析し、系の異方性・スピン軌道相互作用の大きさ等のミクロパラメータとスピン流や電流磁気応答の相関などを調べることにより、カイラリティに由来する現象の定量的な理解を目指していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で前回の基盤C予算を再々延長していたため、その予算からの支出を優先したため。 今年度は国際会議に参加する予定であるが、為替レートの関係で会議費等の支出が予定より大幅に増加している。 必要不可欠な会議や研究打ち合わせに絞り、主に旅費等で支出していく予定である。
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