2023 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the charge order of mixed valence iron oxides by using micro Mossbauer beam
Project/Area Number |
23K03308
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
中村 真一 帝京大学, 理工学部, 教授 (80217851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下村 晋 京都産業大学, 理学部, 教授 (00260216)
三井 隆也 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員 (20354988)
藤原 孝将 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 研究員 (50847150)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メスバウアー回折 / 核共鳴散乱 / マイクロメスバウアービーム / 電荷秩序配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
大型高輝度放射光施設SPring-8 BL11XUに設置した放射光メスバウアー4軸回折計を用いて,混合原子価酸化物の電荷秩序配列の検証を試みている。2023年度は,Fe3O4低温相の電荷秩序配列検証を取り扱った。立方晶逆スピネル型を有するFe3O4は,AサイトにFe3+,Bサイトに同数のFe2+,Fe3+を有する混合原子価鉄酸化物であり,フェルヴェー点125 K以下での単射晶への構造相転移を伴う電荷秩序配列を生じることが知られている。本研究では,まず,300 Kの立方晶域で,禁制200反射からの純核ブラッグ散乱を用いて,高温相のBサイトのみの核共鳴発光スペクトルの測定に初めて成功した。一方で,BL11XUにおいては,核モノクロメーターから発せられるγ線をKBミラーで2度反射・集光させることで,マイクロメスバウアービームが供せられるようにもなった。 このマイクロメスバウアービームを入射γ線として,主にAサイトスペクトルを供する10 10 0反射(45度法)とBサイトスペクトルのみを供する200反射(純核ブラッグ散乱法)を用いて,低温相のメスバウアー回折スペクトルを測定した。その結果,Aサイトスペクトルは低温相でも1種類のFe3+であるのに対して,Bサイトスペクトルでは,分離した反射(220, 004等)の位置によって異なるFe2+的,Fe3+的核共鳴発光スペクトルが得られた。この結果は,BサイトにおけるFe2+/Fe3+の電荷秩序配列を裏付けるものである。 これらの研究成果の一部は,英文学術論文,国内学会発表,国際学会発表として成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射光メスバウアー回折により,Fe3O4高温相で禁制200反射からの純核ブラッグ散乱によりBサイトのみの核共鳴発光スペクトルの測定に初めて成功した。また,ビームライン設備として,マイクロメスバウアービームが供せられるようにもなった。85 K程度までの低温測定も可能になっている。低温相のメスバウアー回折により,電荷秩序配列を裏付ける結果も得られた。研究成果の一部は,英文学術論文,国内学会発表,国際学会発表として発表し,2024年度においても国際会議発表を行う予定である。 一方,2024年度の研究実施に備え,57Feエンリッチ単結晶のLuFe2O4合成も進めており,第一号単結晶は合成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,メスバウアー回折によって,電子強誘電体LuFe2O4のFe2+/Fe3+電荷秩序配列の検証を試みる。本物質では,可能な5つの電荷秩序配列モデルが提唱されている。単斜晶c面内の禁制反射00L(L:奇数)からの純核ブラッグ散乱による反射の有無や回折強度を調べ,その反射を用いた核共鳴発光スペクトルの測定行うことで,これらの電荷秩序配列モデルの検証を行う。予備的な測定として,自然鉄単結晶を用いた測定を既に行なっているが,希土類元素(Lu)によるγ線吸収や蛍光X線の発生によって,目的の信号を得ることができなかった。その経験を踏まえ,新たに合成した57Feエンリッチ単結晶を用いて測定を行う計画である。
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Causes of Carryover |
当初計画では,2023年度中に電動スリットを購入し,検出器前に設置する予定であった。しかし,ビームライン方において,中古の電動スリットが入手され,これが使用可能かどうか検討することになったため,新規購入を見送った。2024年度は,まず,この中古の電動スリットで十分であるかどうか検討する。その結果を踏まえ,予定通り新規購入を行うか,あるいは,別途検出感度向上を図るために,ビームライン上流でのパスの設置やサンプルホルダー周りの改良に費用を当てるかを検討して,繰越した費用を使用する予定である。
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Remarks |
中村真一,下村 晋,三井隆也,藤原孝将:放射光メスバウアー4 軸回折計の開発;マテリアル先端リサーチインフラ利用報告書2022, 22QS0001-0000002231 (2023). 中村真一,下村 晋,三井隆也,藤原孝将:核共鳴散乱を用いた混合原子価鉄酸化物の電荷秩序配列の検証;マテリアル先端リサーチインフラ利用報告書2022, 22QS0103-0000002245 (2023).
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