2023 Fiscal Year Research-status Report
風散布種子における群飛行が到達距離に及ぼす流体力学的効果とその生態学的機能の検証
Project/Area Number |
23K03334
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
秋永 剛 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (50512711)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 憲二 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (40333918)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 風散布種子 / 旋回落下の動力学 / 群飛行 / 散布距離 / 弱協同現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
群飛行する風散布種子の生態学的意義に関し、初年度は翼果の単一落下特性を流体力学的観点から調べるために、翼果の落下初期、遷移位相、終端落下運動状態を多角的に測定する予備実験を重ね、落下状態を定量化する計測システムを開発した。落下状態を特徴付ける翼果の姿勢、落下速度、旋回角速度などの測定値を、海外や日本で過去に進められた先行研究と比較したところ、両者は定性的に一致するが、定量的には差異が見られた。そこで、移動する物体を比較的高速かつ高解像度で自動追尾する機能を有するカメラを導入し、翼果の落下動力学に対する空間測定精度を向上させた。翼果の個体差や落下初期条件の影響を考慮し、その差異の原因について検討しているところである。 併せて、被写体との距離に依存せず一定の光学倍率を保つ特殊な光学系により、翼果の落下姿勢の時間変化を精度良く測定し、翼果の終端落下運動にわずかなゆらぎの現れることを確認した。その原因として、翼果の旋回運動により生じる伴流の不安定性によるもの、あるいは、周囲の外乱が一定の速度と旋回角速度を保つ落下運動を不安定化させることが、また、いずれの場合においても、翼果の複数落下特性は単一の場合とは異なるものとなることが示唆された。集団で落下する翼果の滞空時間を稼ぐ戦略―流体力学的な最適条件―を解明することが本研究の主な目的である。 個体差や成熟度に依存する翼果の形態と質量分布得るためにCTスキャンを行なったが、極薄翼部の検出が容易でないため、翼果の3Dモデル化がまだうまく行っていない。CTスキャナーの測定パラメータ最適化および画像処理方法を検討しているところである。並行して、簡略化した翼果モデルに対して、終端運動の安定性を評価する数理モデルを構築している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
翼果の落下状態を定量化する計測システムを開発し、落下状態を特徴付ける翼果の姿勢、落下速度、旋回角速度などを測定した。測定値は先行研究と定性的に一致することが確認されたが、定量的には差異が見られたので、自動追尾機能を有する高解像度カメラを導入し、落下する翼果の測定精度を向上させた。翼果の個体差や落下初期条件の影響を考慮し、その差異の原因について検討している。 CTスキャンにより翼果の形態と質量分布を取得できるものと期待していたが、極薄翼部の検出が容易でないため、翼果の3Dモデル化が難航している。CTスキャナの測定パラメータ最適化および画像処理方法の修正を検討しているところである。 並行して、前倒しで、簡略化された翼果モデルの終端旋回運動に対するCFD解析および安定性を説明する数理モデルの構築を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、初年度確立した実験手法により、単一翼果の落下特性に対する個体依存性を調べる。 次に、簡略化された翼果モデルの終端旋回落下運動とその安定性を調べる数理モデルを構築し、種子間の弱い流体力学的相互作用について検討する。 加えて、CTスキャナ等を活用し、翼果の形状および質量分布に関する3次元情報を取得する。
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Causes of Carryover |
一部自動化により画像処理などのデータ整理補助業務に関する人件費が減ったため、次年度使用額が生じた。 これは、途中で必要と判断した翼果の3Dデータ取得に関するデータ整理補助業務に充てる予定である。
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