2023 Fiscal Year Research-status Report
Study of plasma dynamics with non-thermal energy cascade under intense laser irradiation
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23K03354
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩田 夏弥 大阪大学, 高等共創研究院, 准教授 (70814086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千徳 靖彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (10322653)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 高エネルギー密度プラズマ / 高強度レーザー / プラズマ粒子加速 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度レーザー光を固体に照射することで、1億気圧級のエネルギー密度をもつプラズマが生成される。光照射下では、プラズマの運動によって光吸収面の構造や物質内のエネルギー輸送が変化し、その結果として高エネルギーの非熱的電子やイオンが発生するが、そのダイナミクスは十分理解されていない。本研究は、高強度レーザー照射下の光からプラズマへのエネルギー変換過程について、開放系集団現象としての性質に着目し理論モデルを構築することを目的としている。 今年度の本研究では、レーザー生成プラズマ中の非熱的電子の運動と高エネルギーイオン発生の関係を明らかにするための大型レーザー実験を実施した。実験では、非熱的電子をレーザー照射領域に効率的に閉じ込めることが、高エネルギーイオンの発生に与える影響を調べた。日米の研究チームで解析を進め、非熱的電子と高エネルギーイオンの個数に相関がある傾向が明らかになってきている。 さらに、プラズマ中の非熱的高エネルギー電子からのX線、ガンマ線輻射と、非熱的電子による磁場生成を含めたプラズマ発展、および熱輸送との関係について理論・シミュレーション研究を行った。入射するレーザー光の強度が高い場合、電子が受ける加速度が大きいために、加速に伴う輻射が重要になる。輻射された光子同士の衝突により電子・陽電子対生成が起こること、生成された陽電子はプラズマが作る自己生成電場によりGeV程度のエネルギーに加速されることを理論モデルにより示した。また、非熱的電子の集団性とプラズマの自己生成磁場が関係しながらエネルギーが輸送されること、さらに高密度領域では非熱的電子がクーロン衝突等により熱化する過程で、従来の理論では説明できない高速な熱輸送が起こることがシミュレーションにより明らかになった。これらの成果を論文および学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、本年度は理論・シミュレーション研究および、レーザー生成プラズマ中の非熱的電子の運動と高速イオン発生の関係を明らかにするための大型レーザー実験を実施することとしていた。実験を実施し解析へと進むことができており、また理論・シミュレーションでは輻射や磁場生成、熱輸送を含めたプラズマ発展の特性を明らかにした。したがって進捗状況はおおむね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度に実施した実験の解析を進め、非熱的電子の振る舞いと高エネルギーイオン発生の関係を明らかにする。解析には大規模プラズマ粒子シミュレーションを活用し、理論モデルとの比較を進める。実験で取得したデータには、目的とする粒子以外からのノイズ信号が含まれ、解析が予想以上に困難となる可能性があるが、共同研究チームにおけるレーザー実験の専門家の協力を得て解析を進める。 また、ここまでに行ったシミュレーションにより明らかになってきた、非熱的電子による磁場生成を含めたプラズマ発展、および高速な熱輸送について、シミュレーション解析と理論モデルの構築を進める。特に、光照射下での開放系集団現象として構造変化などの性質に着目し、理論的考察を行う。これにより、高強度レーザー照射下の非熱的エネルギーカスケードを伴うプラズマ発展の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度、米国におけるレーザー実験実施のために海外旅費を計上していたが、米国にて採択されたプログラムNIF Discovery Scienceにて当該海外旅費が全額サポートされることとなった。そのため次年度使用額が生じた。最近の為替レートや物価の変動により、海外旅費が当初予算計画時よりも高額となっている。また、研究の進展により、海外との新しい共同研究の可能性も見えてきた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、今後の旅費を支出し、国際的な研究展開を行う。
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