2023 Fiscal Year Research-status Report
軽いラムダハイパー核の構造とハイペロンー核子間相互作用の研究
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23K03378
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
肥山 詠美子 東北大学, 理学研究科, 教授 (10311359)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハイパー核 / 荷電対称性の破れ |
Outline of Annual Research Achievements |
核物理分野における最重要課題の一つは、中性子星最大質量(2倍の太陽質量)を理解するために、ハイペロンパズルと呼ばれる謎を解決することである。これは、核子-ハイペロン間相互作用の中で、ラムダ粒子が中間状態でシグマ粒子へ変換するΛN―ΣN結合に起因するΛNN3体力に大きな不定性があることに起因する。このΛN-ΣN結合をハイパー核の構造研究から決めようという流れが活発化している。そこで、本研究では、申請者が独自に開発した厳密少数多体系計算法を駆使して、近年開発されている格子QCD理論に基づくラムダー核子間相互作用(ΛN―ΣN結合を含む)を用いたA=3~7のラムダハイパー核の構造計算を行い、エネルギー準位の実験データと比較することで、ΛN―ΣN結合に起因する3体力の効果を引き出すことを、本研究の目的とする。本年度は、ΛNーΣN結合に起因する荷電対称性の破れに注目した。A=7ラムダハイパー核の結合エネルギーに、荷電対称性の破れの効果を含んでいると仮定し、平均場理論を用いて、質量数が12以上のラムダハイパー核の結合エネルギーを議論した。特にカルシウムを標的核として、電子ビームでカリウムΛハイパー核の生成が、JLABで計画されていることを受けて、カリウムΛハイパー核の結合エネルギーを計算した。結果、A=7や12ラムダハイパー核において、荷電対称性の破れが存在するとしれば、カリウムラムダハイパー核においても大きな荷電対称性の破れが結合エネルギーに存在することを計算で確認した。この計算については、現在、Physical review Cに投稿すべく、執筆中であり、2,3か月後には投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ΛNーΣN結合に起因する荷電対称性の破れに注目した。A=7ラムダハイパー核の結合エネルギーに、荷電対称性の破れの効果を含んでいると仮定し、平均場理論を用いて、質量数が12以上のラムダハイパー核の結合エネルギーを議論した。特にカルシウムを標的核として、電子ビームでカリウムΛハイパー核の生成が、JLABで計画されていることを受けて、カリウムΛハイパー核の結合エネルギーを計算した。結果、A=7や12ラムダハイパー核において、荷電対称性の破れが存在するとしれば、カリウムラムダハイパー核においても大きな荷電対称性の破れが結合エネルギーに存在することを計算で確認した。この計算については、現在、Physical review Cに投稿すべく、執筆中であり、2,3か月後には投稿予定である。また、この業績に関する講演については、日本物理学会で共同研究者の一人が、成果発表を実施、また5月に、国際ワークショップで成果発表を実施する予定である。このようなことから、本研究について、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ΛN-ΣN結合の効果の研究は、JLABやJ-PRAC実験施設において重要な課題の一つであり、ラムダハイパー核の構造から情報を得る必要がある。現在、ΛNーΣN結合に起因する荷電対称性の破れに注目した。A=7ラムダハイパー核の結合エネルギーに、荷電対称性の破れの効果を含んでいると仮定し、平均場理論を用いて、質量数が12以上のラムダハイパー核の結合エネルギーを議論した。特にカルシウムを標的核として、電子ビームでカリウムΛハイパー核の生成が、JLABで計画されていることを受けて、カリウムΛハイパー核の結合エネルギーを計算した。結果、A=7や12ラムダハイパー核において、荷電対称性の破れが存在するとしれば、カリウムラムダハイパー核においても大きな荷電対称性の破れが結合エネルギーに存在することを計算で確認した。今後は、A=7ラムダハイパー核について、クラスター模型に基づき、ΛNーΣN結合を陽に取り入れて、その結合エネルギーを計算することで、ΛN-ΣN結合の効果を求め、かつ、荷電対称性の破れの効果の詳細を議論する。
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Causes of Carryover |
昨年、成果発表を予定していたワークショップを次年度に実施することにした。その旅費を次年度に計上した。
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